研究課題
1.サンプル収集:昨年度に引き続きコスタリカのサンタロサ国立公園からオマキザルとクモザルの糞サンプルを収集した。2.遺伝子及び化学分析:これらのサンプルからDNAを抽出した。赤-緑オプシン遺伝子、苦味受容体TAS2R1、4、9、16、40、42及び偽遺伝子pTAS2R60、中立対照としてeta-globin pseudogene、von Willebrand factor intron 11、transferrin intron 5、beta-2-microglobulin precursor introns 2&3、blue opsin intron 4、ZFY intron 7、ミトコンドリアD ループの集団配列決定を行なった。その結果、新世界ザルのTAS2R1はリガンド結合部位のアミノ酸がヒトと異なっており、リガンドがヒトと異なる可能性があること、ヒトとチンパンジーのTAS2R遺伝子群は機能制約が緩んでいると考えられているのに対し、新世界ザルでは機能制約が強いこと、オマキザルのTAS2R1とTAS2R16は群れ間で顕著な集団分化を示し、地域適応的な自然選択を受けている可能性があることを示した。また、香気成分分析に関しては313種類の化合物を検出し、成熟と未成熟の間で香気成分種類数に差が大きい果実ほどよく匂いが嗅がれる傾向があることを示した。これらのことから多型的色覚の新世界ザルは恒常的3色型の狭鼻猿類より味覚や嗅覚により依存している可能性が考えられる。3.ホエザル赤-緑オプシンのハイブリッド遺伝子について再構成実験を行ない、それらの吸収波長が赤と緑オプシンの中間にあることを確認した。
1: 当初の計画以上に進展している
オプシン、苦味受容体、中立対照とも集団配列決定を進展させ、果実の香気物質について一定の分析結果を得た。
当初の予定に従って研究を継続する。学会等で経過報告を行ない、議論を通してよりよい研究に繋げる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (18件) 備考 (1件)
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