研究課題/領域番号 |
22247037
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平井 啓久 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (10128308)
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研究分担者 |
古賀 章彦 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (80192574)
田辺 秀之 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (50261178)
郷 康広 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (50377123)
宮部 貴子 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (10437288)
五條堀 淳 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教 (00506800)
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キーワード | RCRO / 末端ヘテロクロマチン領域 / サブターミナルサテライト / ブーケステージ / チンパンジー / テナガザル |
研究概要 |
チンパンジーの染色体の75%は、端部にRCROと分類されるヘテロクロマチン領域(TCH)をもつ。この領域を解析するために、主たる成分のひとつであるStSat反復配列を標識として、TCHの進化的意義とその機能を分析した。チンパンジー43個体の体細胞染色体を、StSatクローンを用いてFISH解析した。調べた全個体は17対の染色体の両端部あるいは片端部にStSatの大きな塊を持っていた。しかし、幾つかの個体は、常にStSatを持つ17対以外の染色体は、多型的だった。今回解析した個体間比較において、存在様式に幾つかの異なる分布パターンが観察された。これは、減数分裂のパキテン期までに生じるブーケステージ内で「非相同染色体間端部組換え」の結果派生した変異であると推定された。 フクロテナガザルのゲノムからアルファサテライト(・)DNAを抽出した。もともと、(・)DNAは、霊長類のセントロメアの主成分となっているヘテロクロマチンであるが、テナガザルではテロメアの領域で大規模に増幅していることがフクロテナガザルで明らかになった。 SNV因子とよばれるレトロトランスポゾンを、シロマユテナガザルのゲノムで発見した。この因子はセントロメアのヘテロクロマチンを形成していると考えられ、トランスポゾンが新規のヘテロクロマチンを大量に供給する現象を捉えたものと思われる。 チンパンジーのRCRO領域の3D-FISHによる解析を進めるに際し、RCRO領域と相同なヒト染色体7q31.1および13q14.4領域のBACクローンの選定を行った。BACとRCRO彩色プローブを組み合わせることで、チンパンジーのRCRO領域とその周辺部をセットでRCROの3次元核内配置解析、ゲノム解析することが可能となった。 H22年度の解析に加え、H23年度はさらにチンパンジーゲノムの中から新たに20カ所の領域(20kb)を抽出し、PCRダイレクトシークエンシング法によりチンパンジー集団中のより多くのSNPの多型頻度を求めた。現在チンパンジー24個体について、塩基配列決定を新規領域について進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請当初予定していたRCROの存在部位周辺の遺伝子解析がやや遅れているが、当初計画になかったテナガザルの不毛地帯の解析から、新たなレトロポゾンが発見できたことは、今後の研究の大きな発展が望める。チンパンジーのサブターミナルサテライトのクローンを取得しことで、チンパンジーのオス減数分裂におけるブーケステージのパキテーン期までの遅延に関わる解析が順調に進んだ。他の哺乳類のブーケステージがパキテーンまでには完全に消失していることとの相違は、染色体末端のゲノム不毛地帯が多きく関わっていることが、具体的に指摘できたことは大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム不毛地帯(RCRO)周辺の遺伝子のSNP解析等を進めることで、RCRO周辺の多様性について解析し、RCROの遺伝子の多様性や発現に関わる影響を解析する。テナガザルで発見されたレトロポゾンの解析を進めることで、テナガザルの染色体高変異性のメカニズムを解析するとともに、チンパンジーの染色体末端におけるゲノム不毛地帯の形成機序を解明する糸口とする。3D-FISHの3次元解析をすすめ、RCROの周辺に存在する遺伝子の存在意義を解明する糸口とする。
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