研究課題/領域番号 |
22248001
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
齊藤 邦行 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (60153798)
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研究分担者 |
白岩 立彦 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30154363)
島田 信二 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター, 生産体系研究領域長 (30355309)
國分 牧衛 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40323084)
磯部 勝孝 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (60203072)
鄭 紹輝 佐賀大学, 農学部, 准教授 (90253517)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ダイズ / 多収穫栽培 / 収量ポテンシャル / 日射乾物変換効率 / 乾物生産 / 葉面積指数 / 花蕾数 / 結莢率 |
研究概要 |
ダイズの収量成立過程における開花数,結莢数を決定する気象条件,生理的要因について明らかにするため,早期・普通期・晩期播種の3作期と疎植・密植の栽植密度2水準で栽培を行い,開花前後の環境条件 (日長,気温)ならびに乾物生産が開花数,結莢率に及ぼす影響を調査した.子実収量は普通期密植区を除くと,2010年で最も高かった.莢数は各区とも2010年で最も多くなった.2011年の早期区では普通期区・晩期区に比べ莢数の相違は小さかったが,子実収量は著しく低く,百粒重,結実率も有意に低かった.2012年の子実収量は晩期密植区を除くと,2010年,2011年に比べて低く,普通期疎植区と晩期疎植区では,莢数が有意に低くなった.子実収量と莢数との間には有意な正の相関関係が認められた.全乾物重は2010年が2011年,2012年に比べて高く推移し,2011年と2012年の相違は小さかった.CGRの最大値は2010年で最も高かった.日射乾物変換効率 (RUE) は晩期区で高く推移する傾向がみられ,莢数とRUEとの間には有意な正の相関関係が認められた.積算受光量は2010年で最も高く,2011年および2012年では同程度となった.播種期が遅くなるほど開花始期は早まり,開花期間は短くなり,開花数は少なくなった.開花の推移は3ヵ年ともに同様の傾向がみられたが,開花数は2010年が最も多く推移し,2011年および2012年ではほぼ同様に推移した.晩期密植区では開花期間の短縮に伴い,ピーク時の開花数が最も多くなった.以上より,晩期区では生育期間の短縮に伴い高いRUEを示したこと,積算受光量の最も多かった2010年には生育と開花が促進され,R5以降も乾物重の増加が継続して子実収量が高くなったことから,子実収量の増加には生育全般を通じた高い葉面積指数の確保とR5以降の高いCGRが関係することが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去3年間の東北から九州に及ぶ地域連絡試験の結果を取り纏めた結果、早期栽培では開花期までの日数が長く、栄養成長量が大きくなり、子実収量は概ね高い傾向を示したが、成熟不整合程度(莢先熟)が大きかった。普通期栽培では高温多照の2010年に岡山・筑波・滋賀で多収となり、乾物生産との相関性が認められたが、仙台・藤沢では同様か著しく低収となり、害虫の発生が原因と考えられた。3カ年を通じて、佐賀ではエンレイ(IIc)の収量が著しく低収(100kg/10a)となり、サチユタカ(IIIc)やフクユタカ(IVc)では400kg/10a以上と高いことから、早生品種では病害虫の発生が問題となることが明らかとなった。晩期栽培では、概ね普通期栽培に比べ同等か10%程度の減収がみられたが、密植により多収が得られる事例もみられ、これには花蕾数は減少するものの高い乾物生産により結莢率が高まり、莢数の増加したことに起因していた。これらの結果より、ダイズは慣行普通期栽培よりも播種を早期化することにより、収量性の向上が期待されるが、莢先熟による汚損粒の発生が懸念された。また、6月の梅雨時を避けて7月の梅雨明け後に密植播種することにより、十分な栄養成長量を確保できれば、普通期栽培以上の収量性が得られることが明らかとなった。本年度は、日本作物学会第235回講演会(明治大学)3月29日午前(9:00-12:00)にミニシンポジウム「新たな湿害対策技術を活用した水田転作大豆の多収生産技術」を企画し,ダイズの湿害回避に向けた技術の現状と問題点を議論した。
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今後の研究の推進方策 |
1.多収事例の解析で用いたデータをデータベース化し,ホームページに掲載する。これら事例につき,当該年次の気温・日射量をもとに,多収を達成した要因解析を行う。 2.過去3ヵ年行った,ダイズ栽培連絡試験を本年度も継続し,3ヵ年の子実収量,乾物生産量,日射乾物変換効率のデータを解析して,収量ポテンシャル予測モデルにより,東北-関東-近畿-中国-九州における可能最大収量を予測する。 3.可能最大収量と観測収量との差を収量ギャップと定義して,収量ギャップを生じる要因を,気象要因,土壌水分,収量成立過程に着目して解析を行う。 4.得られた成果をもとに、日本と同様にモンスーンアジアに属する中国のダイズ収量ポテンシャルの向上戦略について、中国でセミナーを開催し、最新の研究成果について議論を深め、研究交流を行う。
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