研究課題/領域番号 |
22248002
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥野 哲郎 京都大学, 農学研究科, 教授 (00221151)
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研究分担者 |
三瀬 和之 京都大学, 農学研究科, 准教授 (90209776)
海道 真典 京都大学, 農学研究科, 助教 (20314247)
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キーワード | 植物ウイルス / RNAウイルス / RNAサイレンシング / 非宿主抵抗性 / 細胞膜修飾 / RNA複製酵素 / 翻訳 / シャペロン |
研究概要 |
Hsp70、Hsp90とArf1遺伝子のRNA配列を組み込んだタバコラトルウイルスベクターを用いたVIGS (virus-induced gene silencing)によりこれらの遺伝子発現を抑制するとRCNMV感染が阻害され、植物体においてもHsp70、Hsp90とArflがRCNMV感染で重要であることが示唆された。。 Biomolecular fluorescence complementation法を用いた解析から、Arf1はRCNMV複製酵素成分タンパク質のひとつであるp27とER膜上で結合することを証明した。ARF1のGDP結合型からGTP結合型への変換を阻害するBrefeldin A (BFA)により、タバコBY2プロトプラストにおけるRCNMVのRNA複製が著しく阻害された。さらに,BFAはp27のER膜への局在および複製酵素複合体の蓄積を阻害した。以上のことから、ARF1はp27によりRCNMV複製の場へリクルートされ、複製酵素複合体の形成、維持において重要な役割を担っていることが示唆された. 同様にBiomolecular fluorescence complementation法を用いた解析から、Hsp70とHsp90もp27とER膜上で結合することを証明した。Hsp70の機能阻害剤である2-phenylethynesulfonamide (PES)は一細胞レベルでのRCNMV複製を阻害した。さらに、試験管内ウイルス翻訳・複製系を用い詳細に解析した結果、PESは機能的なRNA複製酵素複合体形成を阻害し、RNA合成をサポートできないp27を含む巨大な凝集体形成を誘導した。以上の結果から、Hsp70はp27との相互作用を通してRCNMVのRNA複製酵素複合体が適切に形成されるように制御していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウイルスRNA複製複合体構成タンパク質の解析とウイルスRNAゲノムに結合する宿主タンパク質の解析で得られた候補タンパク質が実際にRCNMV感染とRNA複製で重要な働きをしていることが明らかとなったことで、概ね順調と自己評価する。特に、RCNMVの複製酵素成分タンパク質p27と相互作用する宿主因子としてADP-ribosylation factor 1 (ARFI)を同定できたことは.ウイルスによる細胞膜修飾機構を明らかにしていく上で重要な布石となると考える。
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今後の研究の推進方策 |
RCMVの複製酵素タンパク質p27を介したArf1の細胞内局在性変動が明らかになったことから、COP I輸送小胞の形成や脂質修飾酵素の活性化機構の解明を視野に入れて、今後の研究を進める必要があると考える一方、Hsp70、Hsp90の複製複合体形成過程での役割解明には時間的、空間的な解析が必要であり、ハードルはかなり高いと思われるが、詳細な共焦点顕微鏡観察を行っていく予定である。
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