研究課題/領域番号 |
22248004
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
日下部 宜宏 九州大学, 農学研究院, 准教授 (30253595)
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研究分担者 |
李 在萬 九州大学, 農学研究院, 助教 (50404083)
山本 公子 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫科学研究領域, 主任研究員 (40370689)
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キーワード | カイコ / ヘテロクロマチン / Polycomb / エピジェネティクス |
研究概要 |
まず、カイコヒストンの翻訳後修飾については、幾つかのカイコ特異的な修飾が存在する可能が示唆された。そこで、カイコH3における特異修飾の機能(ヒストンコード)を明らかにするために点突然変異を導入するが、まず、内在性のヒストン遺伝子のみをノックダウンし、外来の突然変異遺伝子を発現するシステムを構築した。人工合成した遺伝子は内在遺伝子を相補することができたが、細胞の増殖速度が低下した。また、ヒストンN末端の修飾残基をアラニンに置換した突然変異体についてもK4,K9,K27,S10の4残基について置換変異体を作製した。 ヘテロクロマチンコア構造の解析に関しては、カイコH3K9-HP1システムについてCHIP-seq解析を行ったところ、トランスポゾンの中でもかたよった配列の領域がヘテロクロマチン化されていることが示唆され得た。また、H3K27-Polycombシステムに関してはノックダウン時のマイクロアレイ解析をにより、Polycomb複合体のfull assemblyに依存した遺伝子発現抑制経路とPho-Scmにのみ依存した経路の少なくとも2種の経路が存在することが明らかとなった。 カイコヘテロクロマチン形成とその制御に関わる遺伝子群の機能解析については、カイコSIWI、AGO3遺伝子が相互作用する際には、顆粒状の構造体を形成し、この構造体は生殖細胞に認められるNurge様の構造であることが明らかとなった。この構造体には、Yb-bodyに含まれるタンパク質は存在しないことも明らかにした。Nurge様の構造へのSiwi-Ago3複合体の局在にはカイコVasaタンパク質の存在が必須であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の4つの研究項目について、ほぼ計画通りに進行している。Polycombシステムにおける遺伝子発現経路の多様性の解明やpiRNA生合成経路の細胞内局在部位の同定など一部の項目については、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策については、当初の計画から、大きな変更はない。人工合成した遺伝子は内在遺伝子を相補することができたが、細胞の増殖速度が低下した。この点については、導入遺伝子のコピー数が不足してることが原因と考えられるため、カイコ細胞内で自立複製できるベクターの構築を行っている。
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