研究課題
イネ根におけるNH_4^+の初期同化機能や、イネの一生を通じて成育や生産性にとって重要な窒素リサイクル機能の分子機構と制御に関して、この窒素代謝反応に関わる全ての酵素の遺伝子破壊変異体を用いて解析を進め、窒素利用の分子機構の全貌を解明することを目的としている。NH_4^+の初期同化やリサイクルには、サイトゾル型グルタミン合成酵素(GS1)とNADHグルタミン酸合成酵素(NADH-GOGAT)が関わるが、これらは小遺伝子族を形成しており、GS1;1、GS1;2、GS1;3とNADH-GOGAT1、NADH-GOGAT2のアイソザイムが存在する。本年度は、NADH-GOGAT2とGS1;2の遺伝子破壊変異体に関して詳細に解析した。NADH-GOGAT2変異体を圃場で栽培した結果、一穂あたりの穎果数が極端に減少し、収量低下を引き起こすことが判明した。この遺伝子は、成熟葉身の維管束組織で発現しており、葉身の老化に伴ってシンク器官に転流される窒素形態のグルタミンの合成を司っていることがほぼ証明された。この成果は、国際学術雑誌のFrontiers in Plant Scienceに公表した。GS1;2変異体は、窒素欠乏のような表現型を示し、種々め検討から、根におけるNH_4^+の初期同化で機能していることが証明できた。現在、この成果の公表にむけ、投稿準備中である。また、GS1;1変異体のメタボローム解析を進め、このGS1;1がイネにおけるCとNのバランスを支える中心的な機能を担っていることが判明した。この成果も、国際学術雑誌のPlant Journalに公表した。
1: 当初の計画以上に進展している
三種類のGS1遺伝子と、二種類のNADH-GOGAT遺伝子それぞれの破壊変異体を獲得し、GS1;1とNADH-GOGAT1と2の機能解析を終え、学術雑誌に成果報告を既に行った。また、GS1;2の解析もほぼ終わり、現在論文の公表準備中である。大震災で被害を受けたが、計画以上だと自己評価する。
穎果特異的発現を示すGS1;3の機能解析と、それぞれの変異体を用いたメタボローム解析を、今後進める予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
The Plant Journal
巻: 66 ページ: 456-466
10.1111/j.1365-313X.2011.04506.x
Frontiers in Plant Science
巻: 2(on-line journal) ページ: Article57:1-9
10.3389/fpls.2011.00057
http://www.agri.tohoku.ac.jp/cellbio/index-j.htm