研究課題/領域番号 |
22248006
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
小山 博之 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (90234921)
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研究分担者 |
櫻井 望 公益財団法人かずさDNA研究所, 産業技術研究室, 研究員 (30392286)
山本 義治 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (50301784)
鈴木 雄二 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (80374974)
井内 聖 独立行政法人理化学研究所, 実験植物開発室, 研究員 (90312256)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 分子育種 / 酸性土壌 / 進化 |
研究概要 |
酸性土壌耐性は世界の農業生産における低収量をもたらす要因となるストレス因子である。本研究では、代表者らが特定した新規転写因子STOP1の制御システムの理解を介して、酸性土壌耐性を改善する品種改良方法を確立することを第一の目的としている。本年は、STOP1遺伝子が転写制御する相同遺伝子であるSTOP2の機能の解析、異種植物が持つSTOP1相同遺伝子の解析、制御される重要遺伝子であるリンゴ酸トランスポーター遺伝子の解析などを実施した。第一に、STOP2は相補実験などの結果から制御を受けるものの、アルミニウム耐性には関与しないことが明らかとなった。第二に、異種STOP1相同遺伝子の解析では双子葉、単子葉植物に加えてヒメツリガネゴケも保持することがわかった。ヒメツリガネゴケは、シロイヌナズナSTOP1変異体への相補性検定でアルミニウム耐性を復帰し、遺伝子発現抑制でアルミニウム感受性を示すことから、機能を持つタンパク質であることが確かめられた。つまり、STOPによる酸性土壌耐性機構は、進化段階が早い時期に確立されたものと考えられる。さらに、STOP1が制御するシロイヌナズナのアルミニウム耐性遺伝子、AtALMT1は多面性を持つ遺伝子で、病害微生物応答の典型的なシグナル伝達経路である鞭毛タンパク質による誘導制御を受けることが明らかとなった。これに加えて、いくつかの重要作物からの相同遺伝子の単離や遺伝子組換え体の作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子組換え体の作成など、実験項目に関してはおおむね予定通りに進んでいる。成果の公表に関しても、本年度は国際誌(ヨーロッパ、アメリカ)に2編掲載が決定し、さらに3編が審査中であることから、期間内に予定する報告を完了できるめどが立った。
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今後の研究の推進方策 |
STOP1を過剰に発現する組換え体や、いくつかの植物で遺伝子発現抑制個体を作成していることから、当初計画していた分子育種基盤を構築することは達成できると考えている。最終年度は、異種ゲノムでの相同遺伝子(STOP1自身とそのターゲットとなる遺伝子)の解析や、タンパク質のモデル化、プロモーター構造の予測などの生物情報学的なアプローチと、酸性障害を伴う環境ストレスとSTOP1変異や過剰発現の関係など、分子生理学的にモデルを構築するために必要な実験を行う。大部分の実験はすでに準備が終了し予備的な解析も完了していることから、成果の取りまとめも含めて期間内に目的を達成することは可能である。ワタや、マメ科植物でも遺伝子組換え体の解析を実施し、実用作物での品種改良にもある程度めどをつける予定である。
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