研究課題
酸性土壌の生産性の低さは,世界の食糧生産のボトルネックとなっている。植物は本来,酸性土壌に適応する能力を持つが,作物(つまり本来は酸性土壌に適応・進化したものでない植物)は,酸性土壌に導入した際に感受性を示す場合が多い。本研究で対象としたSTOP1転写制御システムは,申請者らが発見した転写因子で,酸耐性とアルミニウム耐性(ともに,酸性土壌での根の伸長阻害の原因となる)に関わる遺伝子を制御する,マスタースイッチである。一方,このシステムで制御される有機酸放出現象は,植物免疫を与える有用微生物のリクルーティングにもかかわることが報告されていることから,環境抵抗性の重要なモジュールであると考えられる。最終年度に当たる本年は,このシステムの複雑制御が,多面性を持つ有機酸放出現象に対応するものであること,コケを含む陸上植物が保存するシステムであることを明らかにした。実際に,この制御システムはアルミニウムイオンに鋭敏に反応して,例えば,耐性遺伝子であるALMT1リンゴ酸トランスポーターの場合,その転写誘導が遺伝子破壊株が生育阻害を受けない低レベルで応答するとともに,鞭毛タンパク質により誘導される(植物免疫に対応する意味を持つ)ことが明らかとなった。これらの複雑制御と鋭敏な転写制御は小麦などの作物でも保存されることも明らかになったことから,今後の作物の品種改良に重要な分子情報を提供できたものと考えている。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013
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