近年、低環境負荷のエネルギー生産方式として、食品廃棄物などの未利用生物資源を燃料とするバイオ燃料電池の開発が注目されている。本研究では、未利用生物資源を燃料とする高出力、長期安定的に使用できる耐熱性酸化還元酵素を素子とする充電型酵素電池の開発を行うことを主目的とする。まずは、食品中のタンパク質やその構成成分であるアミノ酸を燃料とする酵素電池の開発のために、耐熱性L-プロリン脱水素酵素(PDH)を用いたメディエータ型プロリン燃料電池の製作を進めた。まず、陰極用の超好熱性古細菌由来PDHとして、α_4β_4構造(本来のサブユニット構造)とβ_4構造(脱水素酵素成分のみ)の2種類の酵素の電池としての機能の有効性を評価した。その結果、β_4構造が安定性は僅かに低下するが、酵素の触媒効率がより高いことから、陰極用酵素素子として有効性がより高いことを明らかにした。次にメディエータの性能評価を行い、数種のものからDCIP(ジクロロインドフェノール)が最良であることを見出した。さらに出力の向上のために、酵素の電極への固定化法を検討した。固定化電極基盤としてケッチェンブラックを用いた吸着法による酵素の固定化を行った。その結果、β_4構造のPDHを良好に固定化できることを明らかにした。しかしながら、構築したプロリン燃料電池の起電力は、現在のところ、非常に低い。その原因として、陰極と陽極(白金電極)間のセパレータ膜や電極素材の親水性が低いことが予想されたので、その親水性の改善のための前処理法の検討を開始した。本年度の研究により、安定性に優れた耐熱性のPDHを用いるプロリン電池の基本装置の開発に成功したことから、世界で最初のアミノ酸電池の開発への突破口を開くことができたと考える。しかし、今後装置の改良と酵素の触媒効率の増強を図ることにより、起電力や出力の大幅な改善を達成することが次年度以降必要である。
|