研究課題/領域番号 |
22248010
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大島 敏久 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (10093345)
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キーワード | 酵素電池 / 酸化還元酵素 / 微生物電池 / 廃棄物再資源化 |
研究概要 |
近年、特に東北地方太平洋沖地震以降、低環境負荷のエネルギー生産方式として、食品廃棄物などの未利用生物資源を燃料とするバイオ燃料電池の開発が注目されている。本研究は、未利用生物資源を燃料とし、高出力で且つ、長期安定的に使用できる酸化還元酵素を素子とする充電型酵素電池の開発を行うことを主目的とする。一昨年度は、食品中のタンパク質やその構成成分であるアミノ酸を燃料とする酵素電池の開発を目指し、耐熱性L-プロリン脱水素酵素を用いたメディエータ(ジクロロインドフェノール)型プロリン燃料電池(1m1)の製作に成功したが、起電力(0.2V)、出力とも低く十分でなかった。そこで、昨年度はこれらの問題点の改善と更なる小型化を目指し、溶液循環型の新たな電池セルの開発を行った。容量550μ1で測定可能な電池セルの作製に成功し、起電力も0.6Vと大幅に増大させることに成功した。しかし、出力は2μW/cm^2と依然として十分でないため、次年度は、電極素材、セパレータ膜、メディエータ種類等についての解析を行うとともに、酵素の高出力直接型燃料電池の作製のため高配向性、高密度な酵素の電極への固定化方法の検討を進める。また、高起電力を得るためには、触媒活性の高い酵素が重要であるので、新たな酵素素子の探索を始め、これまでに報告のない基質特異性と高活性を併せ持つ新規脱水素酵素の発見・同定のため、メタ酵素法(純粋培養不可能な生物を含む環境中サンプルから直接酸化還元酵素を単離・同定する方法)研究とゲノム既知生物に存在する機能未知推定上脱水素酵素の機能解析を行った。これまでに、メタ酵素法を用いて新規耐熱性L-ロイシン脱水素酵素の単離・同定に成功し、機能解析を行った。また、酢酸菌Gluconobacter oxydans由来の7種類の推定上PQQ,FAD依存性脱水素酵素の大量発現系の構築に成功し、現在機能解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
酵素電池の作製において、電池の安定的利用を達成する目的で、これまで行われていない安定性の高い好熱菌由来の酸化還元酵素を陰極用素子として利用する方法を検討してきた。しかし、室温での活性が相対的に低いために、起電力が十分でない。そこで触媒活性の高い酵素の検索を行い一定の成果を上げているが、一方で電池装置の改良がまだ十分でない点で、当初の計画よりもやや遅れていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに作成した酵素電池では、出力が依然として低いため、今後、この点を改良するために電極素材、セパレータ膜、メディエータ種類等についての詳細な解析を行うとともに、酵素の高出力直接型燃料電池の作製のため高配向性、高密度な酵素の電極への固定化方法の検討を進める。また、高起電力を得るためには、触媒活性の高い酵素が必要となるので、触媒活性の高い酵素の探索、遺伝子工学的手法による変異酵素の調製などの研究を進める。また、一定の出力が得られたら、充電型酵素電池の開発を検討する。当初の研究計画の大きな変更は今のところない。
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