研究課題/領域番号 |
22248014
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松井 利郎 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20238942)
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研究分担者 |
南部 伸孝 上智大学, 理工学部, 教授 (00249955)
津田 孝範 中部大学, 応用生物科学部, 准教授 (90281568)
佐藤 匡央 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90294909)
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研究期間 (年度) |
2010-05-31 – 2014-03-31
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キーワード | ペプチド / 血管機能改善 / 生活習慣病予防 / MDシミュレーション / カルモジュリン |
研究概要 |
低分子ペプチドの生体調節機能を明示し、先端的食科学の構築を図ることを目的として、血管及びその他組織での生理作用発現性について、今年度は以下の項目を検討した。 1) 血管機能改善作用:SHR由来血管平滑筋を用いて細胞内Ca2+濃度調節機構の解明を行った。血管弛緩性/抗動脈硬化性ジペプチドとして明らかにしたTrp-His及びアデニン(300 μM)を用いたイミダゾール系化合物の細胞内Ca2+量([Ca2+]i)の抑制作用を検討した結果、ペプチドは電位依存性カルシウムチャンネルのリン酸化を抑制することにより、[Ca2+]i濃度を調節していること、他方、アデニンはL型Ca2+チャンネル刺激による [Ca2+]i上昇を抑制せず、PLCアゴニストであるm-3M3FBS刺激による[Ca2+]i上昇を有意に抑制した。また、細胞外からのCa2+流入を遮断すると [Ca2+]i低下作用は認められなかったことから、アデニンは小胞体からのCa2+放出抑制には関与せず、PLC/PKC系への関与を介して細胞内Ca2+シグナルを抑制し、血管弛緩を誘導することが示された。 2)ブタ小腸上皮細胞におけるTNF-a刺激による炎症誘導をTrp-Hisが抑えること、他方、アミノ酸ではその作用は認められないことをはじめて実証した。 3) 平滑筋細胞内Ca2+シグナル系において重要な伝達を担うタンパク質であるカルモジュリンに着目し、Trp-Hisとの仮想結合性をFluo-4蛍光プローブ法により評価した。その結果、Trp-His及びHis-Trpはカルモジュリンに対するCa2+の結合を阻害し、その作用はCa2+結合部位への拮抗的阻害であることをHillプロットにより明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低分子ペプチドがCaMK II/VDCCリン酸化経路を遮断する作用だけでなく、腸管での抗炎症作用を有するとの知見は世界で初めてであり、疾病により各種臓器で誘発される炎症性疾患に対して低分子ペプチドが多様に作用する可能性が十分に示唆される結果を得てきた。他方、ペプチドの腸管吸収・組織蓄積性を的確に把握する手法・評価法については今後さらなる追究が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
1)筋肉組織細胞、小腸上皮細胞を用いて、組織での各種低分子ペプチドのシグナル制御機構を明らかにする。 2)炎症誘導血管細胞を用いて、ペプチドによる抗動脈硬化作用機構を明らかにする。 3)アポE欠損マウスへの3ヶ月にわたる長期ペプチド投与試験を実施し、血管組織での炎症に関わる遺伝子の動態解析と、その制御機構を明らかにする。 4)Fluo-4蛍光プローブCa2+-CaM阻害測定法を用いて、各種ペプチドによる阻害挙動をもとに形成阻害作用の有無と程度を明らかにする。 5)ペプチド吸収動態の解明が可能な新たな高感度分析法を設定し、吸収・組織蓄積動態をin vivoラット評価する。
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