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2011 年度 実績報告書

豪雨時の表層崩壊に起因する土石流の規模と発生時刻の予測

研究課題

研究課題/領域番号 22248018
研究機関京都大学

研究代表者

小杉 賢一朗  京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30263130)

研究分担者 水山 高久  京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00229717)
里深 好文  立命館大学, 理工学部, 教授 (20215875)
堤 大三  京都大学, 防災研究所, 准教授 (40372552)
勝山 正則  京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 研究員 (40425426)
佐山 敬洋  独立行政法人土木研究所, ICHARM, 研究員 (70402930)
宮田 秀介  京都大学, 防災研究所, 助教 (80573378)
藤本 将光  京都大学, 学際融合教育研究推進センター, 助教 (60511508)
キーワード表層崩壊 / 土石流 / 山体地下水 / 森林水文 / 数値シミュレーション
研究概要

昨年度の研究の結果,山体の基岩内に存在する地下水(山体地下水位)が山腹斜面に水を供給する重要な涵養源であり,表層崩壊の発生を予測する上で,山体地下水の挙動ならびに山体地下水の湧水波形を解析することが非常に重要であることが明らかとなった。そこで本年度は,山体地下水の賦存量が大きいと考えられ,過去に多くの崩壊が発生している中古生層堆積岩山地に新たな試験区を設け,集中的な観測を実施した。そしてその結果を,これまで観測を行ってきた,花崗岩を地質とする斜面と比較した。
花崗岩を地質とする斜面からの湧水では,降雨に対応した洪水流出波形に加え,緩やかに長期変動する基底流出波形が観測された。基底流出は梅雨の降雨により増加し7月中旬にピークとなった後徐々に減少したが,9月初旬の豪雨後に再び増加に転じた。このような基底流出波形の変動パターンは,観測を行った全ての湧水で共通していた。このことから,花崗岩を地質とする斜面では,多くの雨水を貯留するひとまとまりの山体地下水帯が存在し,各湧水点の涵養源になっていると考えられた。一方,堆積岩山地の結果では,湧水量の波形に地点間のばらつきが見られた。常に降雨に遅れた緩やかな上昇が観測される地点と,降雨ピークに対応した洪水ピークと降雨後数日間に発生する二次ピークの両方を示す地点が存在した。また,降雨に対する反応が非常に鋭敏で,降雨に遅れた上昇を示さない地点も存在した。以上の結果から,堆積岩山地では複数の山体地下水帯が存在することが考えられた。
以上の様な,地質による山体地下水挙動の違いが,表層崩壊発生のタイミングや崩土の移動形態に大きく影響することが推測された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の研究により,山体地下水が湧水となって山腹斜面に多くの雨水を供給していることを定量的に明らかにすることができた。そして,この湧水パターンが,過去の表層崩壊発生地点の分布と密接な関わりを持っていることを明らかにすることができた。ただし,山体地下水の挙動自体の解明は,地下水位の観測期間が短いことが原因となり,十分に進めることができなかった。また,山体地下水が湧出した後,斜面の土層内部をどのように流下するのか,その状況が降雨規模の拡大に伴ってどのように変化するのかについては,十分な観測を行うことができなかった。

今後の研究の推進方策

まず,山体地下水の水位が降雨によってどのように変化するのかを,連続観測によって明らかにする。また,山体地下水が湧出している斜面において,テンシオメータを用いた高密度観測を実施し,豪雨時の間隙水圧の変動と斜面内部に蓄えられている水分量の変動を定量的に明らかにする。このデータに基づき,表層崩壊の発生タイミングと,崩土内の水分分布の定量化を行う。以上の結果に基づき,表層崩壊が土石流となって流下する際の水の供給源について,降雨,土層内の水,山体からの湧水の割合に着目して考察を加え,土石流流下モデルを開発するための知見を蓄積する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Application of the electrical resistivity imaging for measuring water content distribution in hillslopes2013

    • 著者名/発表者名
      Yamakawa, Y., N. Masaoka, K. Kosugi, Y. Tada, and T. Mizuyama
    • 雑誌名

      J. Disaster Res.

      巻: 8 ページ: 81-89

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 深層崩壊の予測2012

    • 著者名/発表者名
      地頭薗 隆・笹原 克夫・小杉賢一朗・五味 高志・石塚 忠範
    • 雑誌名

      第6 回土砂災害に関するシンポジウム論文集

      巻: 6 ページ: 53-58

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 降雨による山体地下水の水位変動について2012

    • 著者名/発表者名
      小杉賢一朗・藤本将光・水山高久
    • 雑誌名

      京都大学 防災研究所,特定研究集会

      巻: 23C-03 ページ: 56-63

  • [雑誌論文] Detecting groundwater flowing on a mountain slope using electrical resistivity imaging2012

    • 著者名/発表者名
      Yamakawa, Y., N. Masaoka, K. Kosugi, T. Mizuyama, and D. Tsutsumi
    • 雑誌名

      International Symposium on Sustainability/Survivability Science for a Resilient Society Adaptable to Extreme Weather Conditions

      巻: 1 ページ: 8-9

  • [雑誌論文] Specific spring point of bedrock groundwater at the bottom of a hillslope2012

    • 著者名/発表者名
      Fujimoto, M., K. Kosugi, and T. Mizuyama
    • 雑誌名

      International Symposium on Sustainability/Survivability Science for a Resilient Society Adaptable to Extreme Weather Conditions

      巻: 1 ページ: 36-37

  • [学会発表] 植生の回復に伴う洪水流出特性の変化2012

    • 著者名/発表者名
      糸数哲・小杉賢一朗・恩田裕一・蔵治光一郎・田中延亮・後藤太成・太田岳史・水山高久
    • 学会等名
      H24砂防学会研究発表会
    • 発表場所
      高知
    • 年月日
      20120523-20120524
  • [学会発表] 電気探査法とコイル型TDRセンサを用いた山腹斜面における塩水トレーサー試験2012

    • 著者名/発表者名
      山川陽祐・隅田順・小杉賢一朗・水山高久
    • 学会等名
      H24砂防学会研究発表会
    • 発表場所
      高知
    • 年月日
      20120523-20120524
  • [学会発表] ヒノキ人工林における蒸散量の推定―樹液流計測を用いた検討―2012

    • 著者名/発表者名
      鶴田健二・小杉賢一朗・正岡直也・吉藤奈津子・水山高久
    • 学会等名
      H24砂防学会研究発表会
    • 発表場所
      高知
    • 年月日
      20120523-20120524
  • [学会発表] 風化花崗岩山地における山体地下水が斜面崩壊に与える影響2012

    • 著者名/発表者名
      高木将行・山川陽祐・藤本将光・小杉賢一朗・水山高久・王林・矢野晴彦
    • 学会等名
      H24砂防学会研究発表会
    • 発表場所
      高知
    • 年月日
      20120523-20120524

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公開日: 2014-07-24  

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