研究課題/領域番号 |
22248018
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小杉 賢一朗 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30263130)
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研究分担者 |
水山 高久 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00229717)
里深 好文 立命館大学, 理工学部, 教授 (20215875)
堤 大三 京都大学, 防災研究所, 准教授 (40372552)
藤本 将光 立命館大学, 理工学部, 助教 (60511508)
宮田 秀介 京都大学, 防災研究所, 助教 (80573378)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 表層崩壊 / 土石流 / 災害予測 / 森林水文 / 数値シミュレーション |
研究概要 |
長谷川式土壌貫入計の先端にTDR式土壌水分計を取り付けた土壌水分計付貫入計を用いて,観測斜面の内部構造把握を行った。観測斜面上に7本の横断測線を設け,各測線において1 m間隔で貫入試験を実施した。この結果,地表面形状が比較的平坦であるのに対し,土層-基岩境界面は複雑な形状を示し,特に斜面下部では,中央が窪んだ集水地形を呈していることがわかった。 次に貫入試験を実施した地点のうち55地点を選び,テンシオメータを用いた土層-基岩境界面の土壌間隙水圧の計測を実施した。さらに,横断測線と縦断測線を設定してテンシオメータを増設し,断面内部の圧力水頭分布を把握できるようにした。 雨量データとテンシオメータを記録するロガーをインターネットに接続し,LANを用いたリアルタイムの計測制御とデータ回収のシステムを構築した。この結果,大学の研究室からの計測制御が可能となった。テンシオメータの計測間隔は,降雨強度に応じて20~600 secの範囲で遠隔制御により設定し,豪雨時の地下水挙動に関する詳細なデータを得た。さらにLANの環境を利用してネットワークカメラを設置し,観測斜面の様子をリアルタイムで観察し,録画するシステムを構築・運用した。 テンシオメータデータを詳細に解析したところ,基岩から常時湧水が発生し,この湧水が斜面土層中を流下する間に,選択的な水みちを形成していることが判明した。豪雨時には,この水みち通じて雨水流動が集中し,飽和域が急速に拡大していく。この様子を三次元的に把握し,定量化することができた。その結果,崩壊発生を引き起こすメカニズムと,崩壊時の斜面水分状況の解明に繋がるデータを得ることができた。 以上に加え,調査ボーリングによる地下水挙動の把握,高密度電気探査による地下水分布の把握,水質をトレーサーとした土層と基岩の間の水の交換プロセスの解明を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
斜面における地下水の観測,渓流からの流出量の観測は,かなり順調に進んでいる。また,表層崩壊,土石流を予知・予測するためのモデル開発も順調に進んでいる。さらに,表層崩壊に地質が基岩地下水が及ぼす影響の定量化にも大きな進展がみられた。小規模な表層崩壊発時の地下水挙動を把握することには成功したが,崩壊土砂の顕著な移動を観測するには至らなかった。表層崩壊・土石流のメカニズムの解明の為には,さらなるデータの蓄積が必要な状況である。
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今後の研究の推進方策 |
水文観測を継続し,表層崩壊・土石流発生時のデータの取得に努める。特に,調査ボーリング孔を使用した基岩内地下水の挙動の把握と,テンシオメータを用いた土層内地下水の挙動の把握を同時に行い,基岩地下水の湧出による斜面不安定化の実態を解明する。数値シミュレーションに関しては,基岩内の地下水移動を高精度で再現する物理水文モデルを,斜面安定解析モデルに結合させて,崩壊発生タイミングと崩壊時の斜面水分分布の予測精度を向上させる。このモデルの出力値を,土石流流動をシミュレートするモデルに入力し,表層崩壊が土石流化するプロセスを計算し,土石流の到達範囲を予測できるようにする。
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