研究課題/領域番号 |
22248021
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金子 豊二 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (70221190)
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キーワード | ティラピア / 塩類細胞 / ライフサイクル / 機能の可塑性 / NCC / NHE3 / CFTR / NKCC |
研究概要 |
本年度は、広塩性魚のティラピア用いて、鰓の塩類細胞の機能の可塑性とライフサイクルの解明に重点を置いて研究を進めた。まず海水に順致したティラピアを淡水に移行し、塩類細胞の経時的変化を調べた。また鰓におけるNCC、NHE3、CFTRおよびNKCClaの淡水移行に伴う発現動態を調べた。海水順致魚で発現が低かったNCCは淡水移行に伴い発現が著しく増大した。NHE3も淡水に移すと発現が増加した。一方で、海水中で高い発現を示したCFTRおよびNKCC1aはともに淡水中で発現が低下した。海水順致魚の塩類細胞の大部分は海水型のtype-4であったが、type-4は淡水移行に伴い急激に減少し、逆にtype-3が増加した。またtype-4からtype-3への移行型(type-3/4)が、淡水移行直後から頻繁に見られた。以上の結果、海水型のtype-4塩類細胞はtype-3/4を経て淡水型塩類細胞であるtype-3に機能的・形態的に変化を遂げると考えられる。 次に、ティラピアを海水から淡水に移行した際の塩類細胞の機能の可塑性をより詳細に検討した。既存の塩類細胞と新規に出現した塩類細胞を区別した上で各種イオン輸送タンパク質の局在を調べるため、新たに開発した「時間差蛍光多重染色法」を用いた。その結果、淡水移行時に出現したtype-2塩類細胞のうち83%が既存の細胞で、残り17%は新規に発達した細胞だった。多くのtype-2塩類細胞は既存のtype-1から分化したものと考えられる。一方、type-4塩類細胞は淡水移行後直ちに消失し、対照的にtype-3/4とtype-3が出現した。淡水移行後に出現したほとんどのtype-3とすべてのtype-3/4が既存の細胞であり、このことは既存のtype-4塩類細胞がtype-3/4とtype-3に変化したことを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた研究計画のうち「塩類細胞の機能の可塑性」および「塩類細胞のライフサイクルの解明」は計画以上に研究を進めることができた。その一方で、その他の研究計画については順調に進捗しつつも最終的な成果を得るまでは至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
4年計画の2年が経過して後半に入る次年度は、これまでの研究のうち相対的に進捗が遅れているところを重点的に進めるとともに、これまでの成果を統合する方向に研究を推進したい。
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