研究課題
イオン濃度の乏しい淡水中に生息する魚類は、常に体外へとイオンが流出する危険にさらされている。K+に関しても、通常は体内に保持する必要がある。しかし、高K+食やアシドーシス、また細胞や体組織の崩壊などにより、一時的に血漿K+が過剰に上昇する危険性がある。そのため、淡水適応時の魚類でもK+に関してはその排出機構の存在が強く考えられる。これまでに海水馴致ティラピアが塩類細胞からK+を排出することを明らかにした。一方、淡水中では過剰となる水を排出するために、腎臓において多量の尿を産生することから、K+排出における腎臓の貢献も考慮する必要がある。また、淡水に馴致したティラピアの鰓では、Type-IV塩類細胞のみが機能的であると考えられている海水中と異なり、Type-IIおよびType-IIIという異なる2種類の塩類細胞を有することが知られている。そこで淡水馴致ティラピアにおいて鰓によるK+排出の可能性と腎臓の寄与を検討するため、淡水馴致ティラピアを通常淡水と高K+淡水に1週間馴致し、血漿と尿中のイオン濃度、および鰓と腎臓におけるROMKをはじめとした各種イオン輸送体のmRNA発現量を測定した。その結果、高K+馴致群で尿中のK+濃度が有意に増加した。一方、鰓でのROMK発現量が約5倍に増加しており、鰓のROMKが淡水中でもK+の排出に重要であると考えられた。また、鰓の免疫染色の結果、通常淡水群ではROMKのシグナルが僅かであったが、高K+馴致群でROMKの免疫反応が顕著に現れ、さらにROMKがType-III塩類細胞の頂端膜に局在することが明らかとなった。以上の結果より、海水に馴致したティラピアではType-IV塩類細胞が、淡水に馴致したティラピアはType-III塩類細胞が、それぞれ頂端膜にROMKを発現することで、体内で余剰となったK+を排出することが示された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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