研究課題/領域番号 |
22248024
|
研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
窪寺 恒己 独立行政法人国立科学博物館, 標本資料センター, コレクションディレクター (80170041)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 中深層性大型頭足類 / マッコウクジラ / 共進化的行動生態 / 深海カメラシステム / 超小型水中カメラ / マルチ・バイオロガー / 小笠原諸島近海 / 北海道羅臼近海 |
研究概要 |
本研究は,小型・軽量の水中撮影システムおよびLED照明機器を用い,深海環境への撹乱を最小限度に止めることにより,中深層性大型頭足類の自然状態における行動生態を撮影・記録し,さらにマッコウクジラに超小型水中カメラおよびバイオロガーを装着し,その餌となる大型頭足類との共進化的行動生態に関する研究を世界に先駆けて推進することを目的としている。 本年度の調査内容として,昨年度から始めた知床半島羅臼沖の深海カメラシステムによる中深層性イカ類調査および小笠原父島近海でマッコウクジラに静止画ロガーや加速度ロガー等,マルチロガー付けマッコウクジラの摂餌行動生態を把握する調査を行った。駿河湾においては、深海底における腐肉食性動物の蝟集のメカニズムを探るため,人工誘引物質を用いた比較実験調査を行なった。 深海カメラシステムでは、延べ24時間のビデオ映像が撮影され,カタドスイカやタコイカと査定される中層性イカ類の遊泳行動が多数回観察された。昨年度の映像資料とあわせ、それらの行動生態,生物量など現在解析を進めている。 マッコウクジラの超小型水中カメラでは、今までの合計で18個体から17543枚の静止画像を含む42.6時間のデータが得られた。46回の400 m以深の潜水データが得られ、最大潜水時間は57分で最大潜水深度は1354 mであった。 人工誘引物質の実験では、ゼラチン固化匂い溶液を提示することにより各魚種の特異的誘引物質を検索することができることが示された。今後はこの方法を深海域での実験・観察に適用し、水温・流向・流速等の記録を同時に行うことにより観察条件および生息環境を把握して、種々の深海魚種特異的誘引物質を検索する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中深層性大型頭足類に関しては、7月にNHKと共同で小笠原近海において調査・撮影プロジェクトを実施し、有人潜水艇からダイオウイカの生息する深海で実際にヒトの眼でその摂餌行動の観察、映像記録など世界初となる成果をあげた。 マッコウクジラの行動に関しては、超小型水中カメラとマルチ・バイオロガーによる画像・行動解析のデータが同時に得られるようになり、いまだ情報量は十分ではないが、マッコウクジラが大型イカ類を捕食する行動様式など、徐々に解析されつつある。 深海性動物の誘引メカニズムに関しては、人工的な誘引物質をつかった実験により、底生性魚類の種別な特異性が明らかにされつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
中深層性大型頭足類とマッコウクジラの被食‐捕食関係から想定される共進化的行動生態に関しては、大型頭足類およびマッコウクジラ両方向からの調査・研究により、その一端が明らかにされつつある。今後は、両方向から得られた情報を詳細に検討する必要がある。しかし、この3年間で得られた情報量は科学的推論を導き出すにはいまだ十分とは言えず、今後も新たな機器開発、調査方法法を視野に入れながら、フィールド調査を行う必要がある。また、小笠原近海で進めてきた本プロジェクトの比較対象として小笠原海域と同様にマッコウクジラが集群する北海道羅臼沖で、調査・研究を行うことが、本研究課題の深化に向けて望まれる。 深海性動物の誘引メカニズムに関しては、実験条件を整える人工誘引物質の検証段階が終わり、今後はこの方法を深海域での実験・観察に適用し、水温・流向・流速等の記録を同時に行うことにより観察条件および生息環境を把握して、種々の深海魚種特異的誘引物質を検索する予定である。
|