本年度は研究期間の最終年度にあたり、平成23年度から調査海域に選定した知床半島羅臼沖において、深海カメラシステムによる中深層性イカ類調査およびマッコウクジラにマルチロガーを付けマッコウクジラの摂餌行動生態をより正確に把握するための強化調査を行った。駿河湾においては、深海底における腐肉食性動物の蝟集のメカニズムを探るため,人工誘引物質を用いた比較実験調査を行なった。 深海カメラチーム:7月に羅臼船籍の漁船「第38翼丸」を傭船して調査を行い、延べ約12時間の映像が撮影され、1000回を超すカタドスイカやタコイカ類の出現が確認された。今までに集積された映像資料、水深データなどを基に、中深層性大型イカ類の生物量、行動生態など解析を進めている。 マッコウクジラチーム:知床半島羅臼沖にて静止画、音響、加速度、GPSなどを含むマルチロガーによるマッコウクジラの潜水行動調査を行い、6頭にロガーを装着して、計約53時間の潜水行動のデータを得た。この海域のマッコウクジラは、昼夜で異なる餌探査行動を行っていることが示唆され、深海カメラシステムによる頭足類の分布、行動解析の結果とあわせ、マッコウクジラの採餌戦略が明らかになることが期待される。 駿河湾スカベンジャーチーム:深海の腐肉食性ベントスの蝟集実験では、餌として用いたサンマとスルメイカの1時間当たり消費速度の測定を行った。その結果、駿河湾の水深300mでは総消費量は約800gであったのに対し800mでは1.6kgから2.5kgであり、消費速度に約2から3倍の差があった。死骸の消費は陸棚斜面の浅所よりもむしろ深所が中心となっている可能性が示唆された。
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