研究課題/領域番号 |
22248025
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
足立 泰久 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70192466)
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研究分担者 |
小林 幹佳 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (20400179)
楊 英男 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50561007)
吉野 邦彦 筑波大学, システム情報系, 教授 (60182804)
野村 暢彦 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60292520)
京藤 敏達 筑波大学, システム情報系, 教授 (80186345)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | コロイド / 凝集 / 粘土 / フロック / 界面動電現象 / 高分子電解質 / 一粒子計測 / 沈降 |
研究概要 |
本研究は、コロイド界面現象の動的物性論を深化させ、その成果を中核においた展開をはかることによって、土壌汚染対策や天然素材の利用などに役立つ工学体系を明らかにすることを目指している。具体的には土壌物理学、微生物生態学、高分子化学などにおけるダイナミクスをコロイド界面化学的観点から見直し、その視点を深める学術的融合が、化学物質の動態評価、計測、環境修復などに有効であることを立証する。また、その過程で土壌、水環境、生物資源に関連するコロイド界面科学の諸課題を総合的に扱うことのできるユニークな研究基盤を構築する。 研究の4年目にあたる本年度は初年度に着目した基礎的事項をさらに深化させた解析を行い、コロイド界面現象の動的問題について以下の成果を得た。 1.単一コロイド粒子のブラウン運動と電気泳動に着目した解析法、一粒子追跡法を開発し、その解析から初期にコロイド粒子に吸着した高分子電解質が時間スケール約1時間で緩和することを明らかにした。また、この緩和の原因が脱着現象によることを推察し、そのイオン強度依存性を示すデータを取得した。 2.前年度に指摘したパッチモデルに対峙する現象としてブラウン凝集による架橋作用があることを、荷電密度の低い高分子を凝集剤として添加する系で示した。過剰に高分子を添加した系では、立体安定化と静電反発が同時に生じることは稀で、実験によりそのどちらかが卓越して出現することを明らかにした。 3.粘土―腐植の相互作用を解析し、環境中の化学物質の移行挙動に重要な因子となることを明らかにした。 4.土壌修復の観点からPIC(ポリイオンコンプレックス)の作用機構を調べ、コロイド粒子に対する高分子吸着のダイナミクスの理解が基本であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究が進展し、成果が顕在化する中で基礎から応用につながる様々な点において本研究の課題設定の重要性を痛感させられる。既に一粒子計測法やそれに基づく成果は海外や装置メーカーから注目され、一種の競争的環境が形成されていると言う認識にいたった。本研究においても当初課題の早急な達成と新しく出現したテーマへの取り組みが求められる。動的なコロイド界面現象の有用性の解析はこれまで化学的性質が比較的単純な系を中心に展開してきたが、今後はより一般的な複雑な要素を取り入れた系へ展開することが求められる。本研究で明らかにした高分子電解質とBareなコロイド粒子との相互作用の結果は、荷電的側面と疎水親水的な側面、並びに高分子の統計的側面の組み合わせによって、マクロな現象が大きく変化することを示しており、微生物現象を含め一般的な土壌や水環境の現象の理解と応用に展開できると確信する。
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今後の研究の推進方策 |
環境中での化学物質の挙動を考える場合、分子レベルのミクロな情報を積み上げてもマクロなレベルで必要となる情報に至ることはむしろ稀である。その残りの大多数の鍵を握っているのが、コロイド界面スケールが関わる動的不均一問題の扱いである。この領域は連続体力学が破たんするところでもあるが、本研究で例示した成果が一つのブレークスルーとなって、農学、環境学の技術課題を支えるサイエンスにおいても広範な応用に関わる基礎課題の宝庫であることが明らかにしている。また、重要な点として、複雑な系を見る場合においても、単純な界面動電現象の理解が不可欠であり、その事実がまだ十分浸透していないことを指摘できる。本研究で示したモデル系の大要に基づいて、今後も継続的にその領域を開拓し現実の系に近づくためのデータベースを構築していくことが強く求められる。
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