研究課題/領域番号 |
22248030
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 伸一郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (00197146)
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研究分担者 |
伯野 史彦 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (30282700)
西原 真杉 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (90145673)
伊藤 昭博 独立行政法人理化学研究所, 吉田化学遺伝学研究室, 専任研究員 (40391859)
佐伯 泰 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 主席研究員 (80462779)
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キーワード | インスリン様成長因子 / インスリン / インスリン様成長因子受容体 / インスリン受容体基質 / ユビキチン化酵素 / 脱ユビキチン化酵素 / 細胞内シグナル / 増殖 |
研究概要 |
インスリン様成長因子(IGF)は、動物の成長に必須なホルモンである。IGFの成長促進活性は、活性化されたIGF-I受容体キナーゼによってチロシンリン酸化されるインスリン受容体基質(IRS)により仲介される。我々はIRSが多くのタンパク質と相互作用し、巨大な複合体を形成していることを発見し、これらのタンパク質がIRSのチロシンリン酸化やタンパク質レベルの制御に関わっていることを明らかにしてきた。本研究では、IRSと相互作用するタンパク質を介してインスリン様活性が制御される分子機構を解明することを目的としている。昨年度我々は、IRSが、ユビキチン化酵素(E3)であるNedd4や種々の脱ユビキチン化酵素(DUB)と相互作用することを見出した。本年度の解析から、Nedd4はIRS-2をモノユビキチン化し、これが受容体の存在する画分にIRSをリクルートし、その結果チロシンリン酸化が増強、インスリン様活性が強められることがわかった。一方、IRSと相互作用するDUBであるUSP9Xを発現抑制すると、IGF-I受容体およびIRS-2のタンパク質レベルが低下し、IRS-2のIGF刺激依存的なチロシンリン酸化も減少、IGF依存性DNA合成が抑制されることが明らかとなった。更に、IRSとE3あるいはDUBの相互作用を変動させる細胞内シグナルについて検討を加えた。一般にIGFの生理活性は他のシグナル伝達経路によって増強される特徴を有するが、我々が最近IGFとのシグナルクロストークを制御しているタンパク質として同定したPI3KAPは、IRSとNedd4あるいはUSP7/USP9Xとの相互作用には影響しないことなどを確認した。本研究により、IRSと相互作用するE3やDUBは、ユビキチン修飾の制御を介して、IRSの量や質を制御し、インスリン様活性を調節していると結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インスリン受容体基質(IRS)に相互作用するユビキチン化酵素(E3)と脱ユビキチン化酵素(DUB)を同定し、これらがどのような様式でユビキチン化あるいは脱ユビキチン化を引き起こすかの機構の検討を行い、一定の成果を得た。更に、相互作用を変化させるシグナル経路の検討も進めており、研究の進捗状況は順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究は予定通り進行しているので、次年度は、研究計画どおり、本研究でインスリン受容体基質(IRS)に相互作用することが明らかとなったユビキチン化酵素(E3)と脱ユビキチン化酵素(DUB)とIRSの相互作用機構を調べ、更に、これらの酵素を過剰発現あるいは発現抑制がインスリン様成長因子(IGF)依存性増殖に及ぼす影響について検討を加える。同時に、このような現象がIGFのみではなく、インスリンにおいても引き起こされるかについても研究を広げる方針である。
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