研究課題
サブテーマ「水田土壌のメタゲノム解析」については、それに先立つ予備的解析を実施した。まず、土壌RNAに基づいたクローンライブラリー解析によって湛水期および非湛水期に特異的に活性が上昇するグループを明らかにした。湛水期において一時的に水素利用型メタン生成アーキアと水素生成細菌の活性が上昇したが、非湛水期において抑制された。一方、非湛水期において硝化古細菌に近縁であると判明したRice cluster VIアーキアの活性が上昇した。土壌DNAに基づいた定量PCRの結果から、細菌、アーキア、真菌由来の16S rRNA遺伝子のコピー数は、サンプリング期間を通してほとんど変動しなかった。一方、土壌RNAに基づいた定量PCRの結果から、細菌、古細菌、真菌由来の16S rRNAのコピー数は湛水期に高くなり、秋の落水期に低くなる傾向がみられた。これらのことから、水田土壌の細菌やアーキアは湛水期に一時的に活性が上昇し、落水期になると活性が下がることが示唆された。これらの土壌環境データや従来法による微生物群集の解析結果に基づき、異なる時期に採取された多数の土壌サンプルの中から、メタゲノム解析やメタトランスクリプトーム解析に供試するサンプルを選んだ。サブテーマ、「三宅島2000年噴火の影響を受けた森林土壌での再生プロセスとメタゲノム動態」については、噴火の影響が最も強い雄山山頂付近(OY地点)での火山灰堆積物のエイジング(堆積後3.5年~9.6年)にともなう群集構造変化をメタゲノミクスの手法で解析した。その結果、(1)堆積物中では鉄酸化細菌が主要となる群集が維持されたが、鉄酸化菌グループ内で遷移が起こること、(2)堆積物微生物群集のCO2固定活性に関わる主要な酵素系としてカルビン-ベンソン回路があり副次的に還元的クエン酸回路があること、(3)堆積物中で窒素固定活性を担う微生物が鉄酸化細菌から従属栄養細菌に遷移すること、(4)堆積物中の脱窒系遺伝子については、時間経過とともに遺伝子量が増えること、を明らかにした。また、雄山中腹付近(IG地点)の火山灰堆積層試料について、呼吸活性と窒素固定活性を測定し、メタゲノム解析に向けての基礎情報を得た。
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