研究課題
申請者らは、アルギニンメチル化酵素(PRMT)ファミリーの一つとして同定された膜接合型PRMT8が、新規のリン脂質分解酵素(ホスホリパーゼ:PLase)活性を有していることを見出した(未発表)。そこで、本研究では、中枢神経系に特異的に発現するPRMT8に関して、(1)新規PLase活性の生化学的意義の検証、(2)PRMT8のもつ二重酵素活性の細胞生物学的意義の検証、(3)これら活性の個体発生や高次中枢機能に対する個体レベルでの機能の解析を行い、二重酵素活性(MTase+PLase)の生物学的意義の解明を目指す。22年度は、上記の目的に従い、以下のことを明らかにした。(1)PLaseファミリーであるPLDは、ホスファチジルコリン(PC)を基質として、コリンとホスファチジン酸を生成する。先ず、バキュロウイルスにおけるPRMT8の発現系を確立した。その系を用い、PRMT8の精製に成功した。コリン部位にラベルされたPCを用いて、精製PRMT8と反応させたところ、コリン産生を証明できた。以上のことから、PLD活性を有することが明らかとなった。(2)PRMT8が有するHKDモチーフのリジン残基をアルギニン残基に置換し、野生型と変異型をそれぞれPC12細胞にトランスフェクションした。その後、NGF刺激を加えて24時間観察した結果、野生型のみで突起進展が促進されることが明らかになり、PLD活性が必要であることが示唆された。(3)マウスPRMT8遺伝子座の両側にloxP配列を挿入したloxP-PRMT8マウスを、"The European Conditional Mouse Mutagenesis Program"より、また、受精卵にて発現するAyu-1プロモーターの制御下にてCre組換え酵素を発現するTgマウス(Ayu-1-Cre TgM)を"Riken NBRC"より導入した。
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