研究課題/領域番号 |
22248040
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
深水 昭吉 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60199172)
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キーワード | アルギニンメチル化酵素 / PRMT8 / HDKモチーフ / リン脂質 / コリン / フォスファチジン酸 / ダイマー / 神経突起 |
研究概要 |
PRMT8が有する2つの酵素活性(Mrase+PLase)の生物学的意義を、生化学・細胞生物学・発生工学の3つのアプローチから包括的に解明する。具体的には、以下の項目に従って研究を遂行した。 (1)PRMT8の新規PLase活性の生化学的検証:バキュロウイルス発現系によるPRMT8のPLase活性の検証するため、バキュロウイルス発現系で大量調製したPRMT8を用いて、産生物・コリンを特異的オキシダーゼで変換し、PLase活性を測定した。また、HKDモチーフ変異体の酵素活性を測定するため、PLase活性に必須なHKDモチーフに一箇所ずつ変異を導入した変異型PRMT8タンパク質を調整し、上記の方法を用いて測定した。その結果、野生型でのみ有意な活性が確認された。さらに、PRMT8のダイマー形成をBiFC法で可視化したところ、ダイマー形成した野生型は膜局在を示した。一方、ダイマー形成するものの細胞質に局在する変異体や、ダイマー形成できない変異体を得ることができた。 (2)PRMT8がもつ二重酵素活性の細胞生物学的意義の検証:NGF刺激依存的な細胞突起伸展におけるPLase活性の意義の検証を定量化する評価法を、細胞膜で産生されるPAに特異的に結合する蛍光プローブタンパク質(Spo20)を用いて、PC12細胞でPRMT8のPA産生能力を検証した。その結果、HKDモチーフ依存的にPRMT8が細胞膜でPAを産生することが明らかになった。また、PRMT8のSAM結合モチーフ変異体とPLase活性変異体の二重変異体は、野生型に比べてPC12細胞の突起伸展活性が減弱した。 (3)MTase活性とPLase活性の個体機能の解析を行うため、全身性PRMT8ノックアウトマウスのヘテロ欠損を作製した。また、Cre組換え酵素を発現するマウスを用いて、組織特異的ノックアウトマウスを引き続き作製中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)コリンオキシダーゼ活性を測定することで、PIM8の持つリパーゼ活性を検証することができたが、反応バッファーの組成によって、コリン産生検出感度が不安定であり、実験毎にバックグラウンドが変動した。 (2)生細胞において、PA産生をリアルタイムでモニターできるシステムを確立した。この方法によって、さまざまなPRMT8変異体の酵素活性への影響を評価できるようになった。 (3)PRMT8のヘテロ欠損マウスを得ており、これらのマウスを用いてホモ欠損変異体を得ることが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
*PRMT8の酵素活性に影響の少ない、バックグラウンドが安定する反応バッファー系の確立を目指す。 *全自動神経細胞解析ソフトであるHCA-Visionを用いて、NGF刺激による突起の形態変化の促進を評価する。 *PRMT8の本ノックアウトマウスの脳から神経細胞を初代培養系を確立し、細胞レベルにおける機能的貢献を検討する。
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