PRMT8が有する2つの酵素活性(MTase+PLase)の生物学的意義を、生化学・細胞生物学・発生工学の3つのアプローチから包括的に解明する。具体的には、以下の項目に従って研究を遂行した。 1. PRMT8の新規PLase活性の生化学的検証: PLase活性を定量的に測定するため、先ずHA-PLD2をHEK293T細胞にトランスフェクションし、抗-HA抗体で免疫沈降して酵素を粗精製した。精製PLD2を用いて、フォスファチジルコリン(PC)を基質として酵素反応を行い、その生成物を質量分析計(MALDI-QIT-TOF MS)で測定した。その際に、精製標準品のコリンを同時に測定した。その結果、分子量104.30にピークを認め、コリンであることが判明した。PRMT8-HAも同様にHEK293T細胞にトランスフェクションし、抗-HA抗体で免疫沈降して酵素を粗精製した。また、19箇所のチロシン残基を1つずつグルタミン酸残基に置換した19個の変異体もそれぞれ精製し、PCを用いて酵素反応を行った。現在、最適条件を検討中である。 2. PRMT8がもつ二重酵素活性の細胞生物学的意義の検証:PRMT8 依存的な PC12 細胞の形態変化において、突起長・分岐数等の神経突起に関する定量的な評価を行うため、HCA-Vision ソフトウェアを用いて解析を行った。その結果、PRMT8 は突起の伸長ともに、分岐を顕著に促進することは明らかになった。また、PRMT8 の SAM 結合モチーフ変異体と PLase 活性変異体の二重変異体は、野生型に比べてPC12細胞の突起分岐が減弱した。 3. MTase活性とPLase活性の個体機能の解析を行うため、全身性PRMT8ノックアウトマウスのヘテロ欠損を作製した。この欠損マウス同士を交配し、ホモ欠損マウスを作製し、現在表現型を解析中である。
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