研究課題/領域番号 |
22248041
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
澁谷 直人 明治大学, 農学部, 教授 (70350270)
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研究分担者 |
賀来 華江 明治大学, 農学部, 教授 (70409499)
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キーワード | パターン認識受容体 / 植物免疫 / シグナル伝達 / エリシター / キチン |
研究概要 |
前年度の検討から、シロイヌナズナではキチン結合性を示すCEBiPホモログが存在するにも関わらず、イネと異なり、キチンシグナル伝達には寄与していないことが示唆された。この点を明確にするため、3種のホモログ遺伝子全てをノックアウトした3重変異体を作出し、そのキチン応答性を調べた結果、キチン応答には変化が見られなかった。また、イネおよびシロイヌナズナのキチン受容体キナーゼOsCERK1/AtCERK1をベンサミアナタバコで発現させ、キチン結合性を調べた結果、AtCERK1はキチン結合性を示したがイネOsCERK1は結合しなかった。これらのことから、イネキチン受容体はリガンド結合分子としてのCEBiPとOsCERK1が複合体を形成することでシグナル伝達を行うが、シロイヌナズナではAtCERK1受容体キナーゼが単独でキチン認識、シグナル伝達を行っていると考えられることを明らかにした。 一方、受容体複合体形成やシグナル伝達と脂質ラフトとの関係を明らかにするため、イネキチン受容体を構成するCEBiPとOsCERK1の原形質膜上での分布を調べた結果、これらの分子の一部がいずれも脂質ラフトに存在していること、脂質ラフトへの分布そのものはキチンオリゴ糖刺激によって変動しないことが明らかになった。受容体複合体形成・活性化機構の詳細を明らかにするためには、今後、これらの分子の動態を細胞生物学的手法等によってさらに詳細に検討する必要があると考えられた。受容体キナーゼCERK1の細胞内ドメインでin vitro自己リン酸化されるセリン・スレオニン残基をAla置換した変異型CERK1遺伝子を作成し、これらの遺伝子をcerk1変異体に導入した形質転換体を作出した。これら形質転換体のキチン応答性復帰を指標として評価した結果、キチンシグナル伝達に重要と考えられる数カ所の部位を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的としている(1)イネとシロイヌナズナのキチン受容体を構成する分子とその機能の解明、(2)受容体複合体の解析とキチンオリゴ糖エリシターによる活性化機構の解明、(3)受容体下流のシグナル伝達系の解明。とくに受容体と相互作用し、シグナル伝達系の調節に関わる因子の探索とそれらの機能解明、(4)キチンによる防御応答誘導とnod-factorによる根粒形成誘導の分子的接点の解析、のそれぞれにおいて、重要な知見が得られてきている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に当初計画に基づいて研究を推進するが、受容体複合体形成・活性化機構の解析や、受容体相互作用因子の解析などにおいて、プロトプラスト系を用いたBiFCなどの細胞生物学的手法の活用に注力する。また、得られた成果の論文化の促進など情報発信に努める。
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