研究課題/領域番号 |
22248041
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
澁谷 直人 明治大学, 農学部, 教授 (70350270)
|
研究分担者 |
賀来 華江 明治大学, 農学部, 教授 (70409499)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | パターン認識受容体 / 植物免疫 / シグナル伝達 / エリシター / キチン |
研究概要 |
キチン受容体CERK1直下のシグナル伝達機構を明らかにするため、CERK1と直接相互作用し、キチンシグナル伝達に関わる細胞質型受容体様キナーゼ(RLCK)の探索を行った。イネにおいてキチンシグナル伝達に関わることが示されているRLCK185のシロイヌナズナホモログPBL27の機能解析を行ったところ、PBL27は原形質膜においてCERK1と相互作用し、キチンシグナル伝達および病害抵抗性に寄与することが明らかになった。PBL27のMAMP応答に対する寄与をさらに明らかにするため、キチンオリゴ糖およびフラジェリンペプチドflg22による活性酸素生成、カロース蓄積、防御応答関連遺伝子発現を調べた結果、PBL27ノックアウト変異体ではキチン誘導性のカロース蓄積や防御応答関連遺伝子発現が低下している一方で、flg22に対する応答は影響を受けていないことが明らかになった。FLS2/BAK1を介したflg22シグナル伝達では別のRLCKであるBIK1が重要な役割をしていることが知られていることから、これらの結果は異なるタイプのパターン認識受容体(PRR)は下流のシグナル伝達に異なるRLCKを利用していることを示唆している。この点をさらに明確にするため、大腸菌で発現したCERK1およびBAK1,FLS2それぞれのキナーゼドメインによるPBL27,BIK1のリン酸化を調べたところ、CERK1が選択的にPBL27をリン酸化したのに対し、BAK1はBIK1を選択的にリン酸化した。これらの結果は、異なるPRRはそのキナーゼドメインの基質特異性に基づいて異なるRLCKを選択・利用しているということを示唆している。 以上の検討から、植物のパターン認識受容体がそのキナーゼの基質特異性にもとづいて下流のシグナル伝達系因子を使い分けているという興味深い事実を示すことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的としたそれぞれの課題について、重要な知見が得られてきている。今年度は受容体直下でシグナル伝達系を制御する細胞質型キナーゼを同定し、異なる受容体によるこれらキナーゼの使い分けが存在することを明らかにした。また、リガンドによる受容体活性化機構に関する論文などを発表し、研究成果の発信に努めている。
|
今後の研究の推進方策 |
基本的に当初計画に基づいて研究を推進する。最終年度においては、受容体活性化によって引き起こされる自己リン酸化がシグナル伝達でどのような意義を持つかを明らかにするとともに、免疫受容体と共生受容体の進化的関連についても検討を行う。また、これまでに得られた成果をインパクトの高い雑誌に発表することを目指す。
|