研究課題/領域番号 |
22249009
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
吉村 昭彦 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (90182815)
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キーワード | ヘルパーT細胞 / サイトカイン / TGFβ / RORgammat / 炎症 / 自己免疫疾患 / 転写因子 / シグナル伝達 |
研究概要 |
本研究は免疫応答の恒常性を支えるシグナルバランス制御の基本原理の解明を目的に、免疫担当細胞、特にT細胞や樹状細胞の分化および活性化とシグナルバランス制御のメカニズムとシグナルバランスの破綻による免疫関連疾患発症機構を明らかにする。本年度はNaive T細胞からTh17への分化誘導におけるTGFβシグナルの解析を行った。その結果Eomesodermin(Eomes)と呼ばれる転写因子がSmad非依存的にTGFβによって負に制御される事を明らかにした。阻害剤の検索の結果JNK-cJun経路がEomesの発現抑制に必須であった。Eomesを発現するレトロウイルスベクターを構築し、primary T細胞への過剰発現の検討を行った結果、EomesはT17分化(IL-17A、RORgammatの発現)を顕著に抑制することが明らかとなった。またJNKやc-Junの強制発現でもRORgammatの発現は抑制された。TGFβはJNK/c-Junを介した経路でEomesの発現を抑制することで間接的にTh17分化を正に制御していることが明らかとなった。次にTGFβに依存しないでFoxp3を誘導するメカニズムについて検討を行った。遺伝子発現データベース検索を中心にTreg誘導に機能する候補因子を選択し、293細胞を用いたFoxp3プロモーター/ルシフェラーゼによる機能的なスクリーニングを行った。その結果核内オーファン受容体であるNR4a2がFoxp3プロモーターを直接活性化することを見いだした。レトロウイルスを用いたT細胞への強制発現およびコンデショナルノックアウト(cKO)マウスの解析からNR4a2は確かにTGFβ非依存的にFoxp3を発現誘導しうることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TGFβの重要な機能であるTh17とiTregの誘導を区別する重要な経路が見つかったことは、自己免疫疾患などの免疫疾患において免疫バランスを矯正し正常化させる方法の開発につながる。またTGFβ非依存的にFoxp3を誘導する遺伝子の発見も世界初である。
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今後の研究の推進方策 |
TGFβがTh17細胞を誘導するメカニズムはまだ全容が解明されたわけではない。特にこれまで我々が同定したシグナルはすべて抑制系でありpositiveなシグナルは必ず存在すると思われる。今後も引き続きTh17細胞分化誘導機構の全容を明らかにするとともに、TGFβのシグナルを標的とした自己免疫疾患の治療法の開発を進めたい。NR4a2に関しては今後はNr4a2がどのようにしてTreg誘導を制御するのか分子機構を明らかにするとともに、NR4a2の活性を増強することで免疫疾患の治療につなげる。
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