研究概要 |
TGFβはナイーブT細胞にFoxp3を誘導することができるが、Th1などのエフェクターに分化したT細胞には誘導できない。活性化型TGFβ受容体RIをエフェクターT細胞に強制発現した場合の効果を検討した。その結果TGFβによるFoxp3の誘導やIFNγの抑制はナイーブT細胞でのみ観察され、一旦活性化されたT細胞に活性化型TGFβ受容体を発現させても同様の現象はみられなかった。したがって活性化されたT細胞ではSmadだけではFoxp3を誘導することは難しいと考えられる。一方でSmad2/3両欠損マウスでもnTregの発生は正常に起こっていた。このことから胸腺においてはTGFβに依存しない何らかのFoxp3発現維持機構が存在することが示唆される。我々は活性化型T細胞を抑制型に転換するために、Smad非依存的にFoxp3を誘導しうる遺伝子を単離することをめざした。候補約150遺伝子を完全長cDNAライブラリーよりピックアップし、293細胞を用いたFoxp3プロモーター/ルシフェラーゼによる機能的なスクリーニングを行った。その結果核内オーファン受容体であるNR4a2がFoxp3プロモーターを直接活性化することを見いだした。NR4a2のみを欠損させたマウスは自己免疫疾患を自然発症しなかった。そこでNR4aファミリーの全て(NR4a1,NR4a2,NR4a3)をT細胞特異的に欠損させたTKOマウスを作成した。TKOマウスでは胸腺・末梢共にTregが全く存在しないことが明らかとなった。さらにTKO細胞ではネガティブセレクションが減弱していた。その結果、TKOマウスは激しい全身性の自己免疫疾患を発症し、生後3週間以内に死亡することが明らかとなった。これらの結果から、NR4aファミリー分子は同様の機能を持ち、互いに補い合いつつTreg分化に機能していることが明らかとなった。
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