研究課題/領域番号 |
22249011
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮島 篤 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (50135232)
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キーワード | 細胞周期 / 細胞分裂 / 細胞肥大 / サイトカイン / FGF / 幹細胞 |
研究概要 |
DDC投与など肝前駆細胞(LPC)の出現を伴う肝障害時におけるNotch シグナルにつき検討した。Notchシグナルに必須のRBPJの肝臓特異的ノックアウトマウスを用いたin vivoの解析およびNotchシグナルの阻害剤を用いたin vitroの解析から、Notchの活性化はLPC の増殖を促進することが示された。 部分肝切除(PHx)からの肝再生のメカニズムに関する解析を行った。肝細胞は通常G0期にあるが、PHx後には大部分の肝細胞はS期へと移行する。しかし、分裂した肝細胞の数は非常に少なく、肝再生後には肝細胞当たりのDNA量の増加が確認された。またM期への進行に必須の因子が抑制されていたことから、PHxによりDNA合成を行った肝細胞の多くは分裂せず、結果として細胞の倍数性が増加することが考えられる。通常肝臓における肝細胞は単核細胞に加えて二核細胞も多く存在するが、肝再生後に二核細胞の割合は半分に減少しており、二核細胞が選択的に分裂して単核肝細胞となった。したがって、PHx後における肝細胞は通常の細胞周期制御機構とは異なることが明らかになった。 オンコスタチンM(OSM)受容体欠損マウスは肝障害に対する感受性が高く、さらに高脂肪食により肥満/脂肪肝になるとの結果を得ており、新たな生活習慣病モデルとして解析した。OSMはマクロファージのフェノタイプを炎症性サイトカイン(TNFa)産生型のM1マクロファージから抗炎症性サイトカイン(IL-10)産生型のM2マクロファージへとスイッチすることでインスリン抵抗性を改善している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
部分間接所からの肝再生機構についての新たなモデルを提唱することができた。また、肝前駆細胞の出現を伴う肝再生におけるNotchグナル系の重要性を示す事ができた。肥満/脂肪肝において、オンコスタチンMによるマクロファージ制御という機構が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
肝切除に対応して肝細胞が肥大するメカニズムの解明、肝細胞の特殊な細胞周期制御の機構の解明が待たれる。肝前駆細胞の起源や、ニッチ細胞の解析が今後は重要な課題となる。
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