研究課題/領域番号 |
22249012
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研究機関 | (独)国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
下遠野 邦忠 (独)国立国際医療研究センター, 肝炎免疫研究センター, 特任部長 (10000259)
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研究期間 (年度) |
2010-05-31 – 2014-03-31
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キーワード | C型肝炎ウイルス / 持続感染 / VLDLR / アポリポ蛋白質E / リポ蛋白質 / LDLR / 感染 / 受容体 |
研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)感染による慢性肝炎患者の多くは同時に脂肪代謝異常による脂肪肝やII型糖尿病を併発する場合が多い。これらの代謝異常が肝硬変や肝がん発症の危険因子になる。HCV感染細胞における脂肪滴の増加はウイルスが細胞の脂肪代謝を変化させる結果である。その働きには、脂肪合成の活性化に加えて、脂肪の細胞外への輸送経路の調節も存在する。後者では、HCVがリポタンパク質と会合していること、特にリポタンパク質の成分の一つであるアポリポタンパク質E(Apo-E)がウイルス粒子に会合して存在することなどを明らかにしてきた。ウイルス粒子上のApo-Eは感染に重要な働きをする。本研究ではウイルス粒子に会合するリポタンパク質のウイルス複製における意義を明らかにすること目的とした。ウイルス粒子に会合しているApo-Eは感染時に細胞表面に存在するリポタンパク質受容体を認識し、その結果ウイルス粒子が細胞に吸着すると考えられる。その際、リポタンパク質受容体として、LDLR,SR-BIが機能することが知られている。一方別のリポタンパク質受容体であるVLDLRの産生は通常の培養条件ではヒト培養肝細胞への発現は観察されない。しかし、低酸素状態で培養すると発現が誘導されることを見出した。また、この条件でHCV感染を行うと感染効率が若干であるが増加した。そこで、低酸素条件で産生されるVLDLRもHCV感染時の受容体として働いていると考えた。一方VLDLRを強制発現する細胞を樹立しHCV感染を調べると、VLDLR非産生細胞に比べて優位に感染が増加した。また、VLDLR変異体を発現する細胞では感染の増加は見られなかった。これらのことから、HCV感染にはこれまでに報告されたのとは異なる感染の仕組みがあると考えられる成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HCVに会合しているApo-Eは感染の際にリポ蛋白質受容体、LDLR,SR-BIを認識してウイルスを細胞に吸着させる働きをもつと考えられている。しかし、培養条件を低酸素条件にするとHCVの感染性に変化がみられ、その条件下で発現誘導されるVLDLRがウイルス受容体になると考えられる成果を得た。ヒトの肝臓組織における酸素分圧は外界よりも低いと考えられるので、生体内ではVLDLRを介したウイルス感染もおこると考えられ、生理的な感染が培養細胞への感染とは異なる要素を含むと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
低酸素状態で培養した細胞へのHCV感染実験の分子機構を明らかにする。できるだけ生理的な条件が反映されるようにして解析を進め、HCV粒子放出と感染初期にリポ蛋白質がどのように関わるかを明らかにする。
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