研究概要 |
本研究においては,我々がこれまで継続してきたリゾリン脂質の基礎・臨床的研究を集大成して,未開の分野である脂質メディエーターの臨床検査医学の構築を目指し,以下のような具体的成果を挙げることができた. <スフィンゴシン1-リン酸(S1P)関連> S1Pの受容体S1P1作動薬として注目されているFTY720の脊髄損傷回復作用と(免疫作用を介さないという)メカニズム(Norimatsu, Y., et al.2012年),S1P2機能抑制による門脈圧亢進の解除(Kegeyama, Y., et al.)という先駆的知見を明らかにすることにより,S1Pの病態生理学的意義を明らかにした.血中S1P測定の臨床検査への応用を考えると極めて重要な知見と考えている.一方,血漿S1Pの早期動脈硬化における変動の意義を明らかにした(Sugiura, T.,et al.2012年). <リゾホスファチジン酸(LPA)とその産生酵素であるオートタキシン(ATX)関連> 肝線維症(Nakagawa, H., et al.2011年),膵癌(Nakai, Y., et al.2011年),妊娠高血圧症候群(Masuda, A., et al.2011年)における血清ATXの測定意義を明らかにするとともに,ATXアイソフォーム解析の可能性を明らかにした(Hashimoto, T., et al.2012年). 急性冠症候群における血漿LPA上昇とこれがATXに依存しないことを明らかにした(Dohi, T., et al.2012年). 〈その他〉 生理活性脂質PAFの産生酵素1ipoprotein-associated phospholipase A2の急性冠症候群における解析の有用性を明らかにした(Dohi, T., et al.).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スフィンゴシン1-リン酸(S1P),リゾホスファチジン酸(LPA)/オートタキシン(ATX)に関して,その病態生理学的意義をさらに明らかにすることができたとともに,その測定の臨床検査医学的有用性をいくつか明らかにすることができた.とくに,肝線維化における血清ATX測定は,将来,日常臨床検査になりうる可能性を有しており,今後,実用化を目指す努力を続けたい.
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