研究課題/領域番号 |
22249024
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福土 審 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80199249)
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研究分担者 |
金澤 素 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70323003)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脳腸相関 / 過敏性腸症候群 / CRH / 消化管知覚 / 消化管運動 / 脳画像 / CRH-R1 / α-helical CRH |
研究概要 |
過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome; IBS)は慢性で繰り返し生じる腹痛と便通異常を主体とする症候群であり、脳腸相関の異常を呈する代表疾患である。われわれは、脳の特定部位でcorticotropin- releasing hormone (CRH)を中心とする神経伝達物質が放出され、中枢神経機能を変化させることがIBSの病態の本質にあると仮説づけている。この仮説を動物実験とヒトで検証することを目的とする。(1) 動物:ラット大腸内にミニバロスタットカテーテルを挿入し、圧インフレ-タに接続して膨張、弛緩を繰り返し、大腸伸展刺激を統制して加えた。この時の室傍核c-Fos、CRH活性を評価し、選択的CRH-R1拮抗薬のこれらに及ぼす影響を分析した。(2) ヒト:対象を健常成人、IBS患者とした。方法は、検査日にバロスタットカテーテルを大腸に留置し、バロスタットを圧インフレ-タに接続したコンピュータで大腸伸展刺激を統制して与え、順序をランダムにしたCRHもしくはplaceboを投与した群の画像分析を行った。また、脳波計と心電計に刺激信号を入力し、内臓知覚大脳誘発電位・心電図波形を記録するとともに、経頭蓋磁気刺激検査(TMS)と脳のMRIを行った。動物で大腸伸展刺激による室傍核CRHニューロンの活性化とCRH-R1拮抗薬によるその抑制効果が得られた。ヒトではCRH投与あるいは経頭蓋磁気刺激による内臓知覚、情動と消化管運動の変容所見が得られ、IBS患者のストレス下における背外側前頭前野の賦活不全を発見することができた。昨年度に続いて仮説を支持する所見が得られ、今後の展開が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究は堅調に進んでおり、仮説が証明されてきている。特に、ヒトにおいてCRH投与あるいは経頭蓋磁気刺激による内臓知覚、情動と消化管運動の変容所見が得られ、IBS患者のストレス下における背外側前頭前野の賦活不全を発見することができたことは国際的にも高く評価されている。論文が専門誌に掲載されるだけでなく、本研究には社会的な関心が寄せられ、その実、NHKの健康番組などで研究成果が社会に還元されている。社会に対する研究費使用の説明責任を十分に果たせていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在の速度で研究を進めて行けば、目標を十分に達成できるものと見込んでいる。平成25年度の研究の進展によっては、研究の進展による研究継続の前年度申請の対象になり得る順調な進捗状況である。CRH系とドパミンの関連が明らかにされつつある。ドパミンは快・不快情動ならびに行動選択との関連を持つ。われわれが発見したIBS患者のストレス下における背外側前頭前野の賦活不全はストレス応答の抑制系の機能低下を意味している。この異常を最近明らかになりつつあるCRH系の毒性とその結果としてのシナプトジェネシス変成・低下がどのように生起するかについて研究を進める。
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