研究課題
過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome; IBS)は便通異常に関連した腹痛・腹部不快感が慢性・再発性に持続する症候群である。IBSはまた、代表的なストレス関連疾患であり、心身症としての側面を持つ。そのストレス関連性の病態生理を解明するべく、脳腸ペプチドであるcorticotropin-releasing hormone (CRH)に焦点を当て、研究した。本年度は、大腸刺激による脳内CRH遊離が脳腸相関を駆動させて悪循環を形成すること、並びに、その過程には扁桃体が重要であり、その制御に帯状回や前頭前野が関与する、と仮説を立て、これを検証した。(1) 動物:ラット大腸内にミニバロスタットカテーテルを挿入し、圧インフレ-タに接続して膨張、弛緩を繰り返し、大腸伸展刺激を統制して加えた。同時に、扁桃体にCRHを注入し、microdialysisにて、扁桃体noradrenaline、serotonin、dopamine遊離を測定し、選択的CRH-R1拮抗薬のこれらに及ぼす影響を分析した。(2) ヒト:対象を健常成人、IBS患者とした。方法は、検査日にバロスタットカテーテルを大腸に留置し、バロスタットを圧インフレ-タに接続したコンピュータで大腸伸展刺激を統制して与え、順序をランダムにしたCRHもしくはplaceboを投与した群のPETによるH2[15-O]の局所脳血流の画像分析を行った。動物で大腸伸展刺激による扁桃体からのnoradrenaline遊離とCRH注入によるその増大、CRH-R1拮抗薬による抑制効果が見られた。ヒトではCRHの静脈内投与により、基線値では扁桃体の活性化がIBS患者で健常者より強く見られた。ところが、大腸刺激時には、CRHの静脈内投与により、健常者で扁桃体の活性化が生じるのに、IBS患者では基線値以上の活性化が生じなかった。IBSの病態においては、扁桃体の活性化が重要であり、これがCRHを介することが示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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