研究課題
生体は多様なストレスを受容し、生存に不可欠な種々の反応を視床下部を中心とした「生存脳の指令センター」を介して、生体の危機管理(ホメオサーベイランス)を行う。本研究では、(1)ストレスをセンシングして。生存脳の指令センター」ヘインプットするメカニズム、(2)「生存脳」から免疫系や代謝系ヘシグナルをアウトプットし、骨格、免疫系を含む全身組織を総動員するメカニズムの解明を目的とした。平成23年度まで、ストレスセンシングからホメオサーベイランスへの制御システムを各々の系で関連付ける結果が得られた。即ち、疼痛・温度ストレスの視床下部諸核への入力系にバゾプレシン系やTRPチャネルが関与することを明らかにし、生存脳指令センターとして機能する事を解明した。また、酸化ストレスによるDNA損傷に関与する新規転写因子NFlBを同定し、入力異常の分子機構を解明した。一方、代表的な神経伝達物質であるドパミンは、D1様受容体を介して樹状細胞によるナイーブT細胞からTh17細胞への分化、及び、単球から破骨細胞への成熟を誘導し、生存脳から免疫、骨代謝系への出力経路に関与する事を解明した。さらに、力学的ストレスは、PPARγの亢進とTie-2などの血管関連分子抑制を介して、骨芽細胞分化を障害し、骨量低下をもたらす事を解明した。平成24年度以降は、TRPV1およびTRPV4ノックアウトマウスやヌードマウス移植系を用い、多様なストレスの視床下部への入力情報伝達経路、分子解明を解明する。また、ドパミン等を媒介とする生存脳から骨格、免疫系への出力系が、間葉系幹細胞から骨芽細胞、骨髄幹細胞から破骨細胞、ナイーブT細胞からTh17,Tfh細胞への分化に及ぼす機構を解明する。以上、ストレスに対するホメオサーベイランスのダイナミズムを明らかにし、さらに、生存脳からの出力系の調整を介して免疫・代謝疾患等の制御への戦略を新たな観点から構築することをも目指す。
2: おおむね順調に進展している
ストレスをセンシングして「生存脳の指令センター」へインプットするメカニズムとして、疼痛ストレス・温度ストレスの入力系として生存脳の指令センターとして視床下部に着目し、ストレス受容におけるバゾプレシン系やストレスセンシングに重要なTRPチャネルの関与などを明らかにした。また、ストレスを視床下部へ伝達する際に生ずるDNA損傷や細胞増殖に及ぼす影響を解明した。一方、免疫系や代謝系ヘシグナルをアウトプットについては、ドパミンによるTh17細胞優位の免疫系の誘導機構、破骨細胞の成熟誘導など、及び、力学的ストレスによる骨代謝のバランス制御機構など新たなシグナルアウトプット経路を解明した。以上より、おおむね順調に進展していると考える。
平成24年度以降は、上記の目的達成のために下記を遂行し、生存脳(視床下部)におけるストレスに対するホメオサーベイランスのダイナミズムを解明し、生存脳から免疫・代謝系への出力経路を解明し、出力経路の調整を介して免疫疾患、代謝疾患等の制御への戦略を新たな観点から目指す。(1)生存脳として機能する視床下部を中心とした情報伝達経路の解明(上田担当)バゾプレッシやオキシトシンのトランスジェニックラットを用いて、ストレスに対する視床下部-自律神経系・神経内分泌系の神経回路網の役割を解析する。また、TRPV1およびTRPV4ノックアウトマウスを用いて、慢性疼痛モデルを作成し、急性疼痛に対する反応と比較し、ストレスセンシングとしてのTRPチャネルの役割を検討する。(2)酸化ストレスなどによるDNA損傷と概日リズム、細胞増殖に関する研究(河野担当)ヌードマウス移植系での細胞増殖と概日リズムを解析する。即ち、飼育環境照明を変えて細胞増殖、時計関連分子や標的分子の発現を検討し、マイクロアレイにてがん細胞の遺伝子発現を解析し、酸化ストレスとの関連を解明する。(3)生存脳の出力系から骨・免疫系への情報伝達と病態形成機構の解明(田中担当)ドパミン、D1様受容体刺激・阻害薬を中心にT細胞や破骨細胞,間葉系幹細胞の分化系における「生存脳」からの出力経路を解明する。また、自己免疫モデルでも出力経路の解明,及び、それらの制御を介した免疫・代謝疾患等の制御への戦略を新たな観点から構築することをも目指す。(4)力学的ストレス-生存脳-骨代謝調節軸に於ける情報伝達機構の解明(中村担当)レプチン-交感神経系、DC-STAMP、ephrinB2-Ephb4を介するシグナルについて、力学的ストレス下における、間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化、破骨細胞、血管内皮細胞への分化をWnt/β-catehinシグナルやPTH/PTHrPシグナルの解析を中心に関連タンパクと遺伝子の変化を調べ、細胞間シグナルクロストークを解明する。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (42件) (うち査読あり 41件) 学会発表 (5件)
Ann Rheum Dis
巻: (in press)
J Allergy Clin Immunol
Boold
Arthritis Rheum
Rheumatology
Journal of Neuroscience
Stress
J.phys.chem
Cancer Sci.
J Bone Miner Metab.
Osteoporos Int.
J Immunol
巻: 186 ページ: 3745-3752
巻: 63 ページ: 1658-1667
Brain Research
巻: 1424 ページ: 1-8
Neuroscience
巻: 196 ページ: 97-103
Journal of Neuroscience Methods
巻: 201 ページ: 191-195
Journal of Biological Chemistry
巻: 286 ページ: 21458-21465
Current Protein and Peptide Science
巻: 12 ページ: 280-287
Endocrinology
巻: 152 ページ: 2768-2774
巻: 1394 ページ: 71-78
Science Signaling
巻: 157 ページ: 4-5
European Journal of Pharmacology
巻: 655 ページ: 31-37
Hormones and Behavior
巻: 59 ページ: 221-226
International Journal of Cancer
巻: 28 ページ: 2215-2223
Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.
巻: 52 ページ: 1226-1234
巻: 52 ページ: 1055-1063
巻: 102 ページ: 382-386
Int.J.Oncol.
巻: 38 ページ: 893-902
巻: 102 ページ: 578-582
巻: 102 ページ: 1007-1013
ATVB
巻: 31 ページ: 800-807
Biochem.Biophys.Res.Commun.
巻: 408 ページ: 45-51
Oncogene
巻: 30 ページ: 4843-4854
Br.J.Cancer
巻: 104 ページ: 1882-1889
Bone.
巻: 48 ページ: 1075-1086
巻: 22 ページ: 587-597
Int J Cancer.
巻: 128 ページ: 2215-2223