研究課題/領域番号 |
22249033
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
松阪 泰二 東海大学, 医学部, 准教授 (50317749)
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研究分担者 |
市川 家國 東海大学, 医学部, 教授 (80317768)
新村 文男 東海大学, 医学部, 准教授 (30282750)
西山 成 香川大学, 医学部, 教授 (10325334)
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キーワード | Angiotensin II / Angiotensinogen / ポドサイト / 慢性腎不全 / ノックアウトマウス / megalin / 糸球体硬化症 / 腎間質線維化 |
研究概要 |
腎臓内Angiotensin(A)IIの産生機序を明らかにするために、肝臓または腎臓選択的angiotensinogen(Agt)ノックアウト(KO)マウスの腎臓内AIIを測定した。その結果、腎臓Agt KOマウスの腎臓内AIIは低下せず、肝臓Agt KOマウスの腎臓内AIIは著減している事がわかった。またポドサイト傷害モデルマウスNEP25では、腎臓内のAgtとAIIが増加していた。また、NEP25マウスにポドサイト傷害を誘導した後に、片方の尿管を結紮し閉塞させると、閉塞側腎臓では腎臓内AgtとAIIが低下していた。 これらの結果と、以前のmegalin KOマウスの解析から、以下のような事が明らかとなった。1)肝臓は血漿Agtの主要な源である。2)血漿Agtの一部は、正常糸球体で濾過され、近位曲尿細管でmegalinに依存して再吸収される。3)近位直尿細管は、多量のAgt mRNAを合成しているが、これに由来するAgt蛋白質は、直ちに尿中に排泄され、腎臓内に留まらない。4)腎臓内AIIは、肝臓で合成されたAgtに由来する。5)ポドサイトの傷害により濾過バリアが破綻した状態では、Agt蛋白質の尿細管腔への漏出が増加し、腎臓内AIIが増加する。つまり、腎臓内AIIの産生は、レニンのみならず、基質Agtの供給によって調節され、後者は糸球体濾過バリアの健全性に依存している。6)肝臓Agt遺伝子は、血圧の維持や正常腎臓構造の維持に重要であるが、近位直尿細管のAgtはこれらに寄与せずその機能は不明である。 ポドサイト傷害により増加した腎臓内AIIは、ネフローゼ症候群時の腎臓でのNa再吸収に関与する可能性があり、また糸球体毛細血管内圧の上昇を介してポドサイト傷害を加速させ、悪循環的に腎傷害を加速させる可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最も重要な仮説の検証は順調に達成し、論文化できたが、腎臓特異的megalinノックアウトマウスの作成が遅れている。これには複雑で多段階のマウスの交配が必要で、当初Ndrg1-Creマウスの導入が遅れた事もあり、予想以上に時間がかかっている。現在ようやく1匹ができたところで、今後megalinがどの程度減少しているかを解析してゆく。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞におけるAgt輸送の研究は、競合する研究者によって実施され発表されてしまったので、我々が行う必要性がなくなり実施しない事にした。Megalin KOマウスの作成解析等、主要な計画は変更しない。尿細管特異的AT1A KOマウスは、競合する研究者により作成され、血圧に関するデータが発表された。今後、我々が行うかどうかは、megalinKOマウスの結果をふまえて、柔軟に対応したい。現行の研究に派生する研究として、腎傷害時のAII産生機序をさらに掘り下げる事と、高血圧時の腎臓内AII産生機序の解析を新たに計画し、すでに実験を開始している。
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