研究課題/領域番号 |
22249033
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
松阪 泰二 東海大学, 医学部, 准教授 (50317749)
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研究分担者 |
西山 成 香川大学, 医学部, 教授 (10325334)
新村 文男 東海大学, 医学部, 准教授 (30282750)
市川 家國 東海大学, 医学部, 非常勤教授 (80317768)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | AngiotensinII / Angiotensinogen / ポドサイト / 慢性腎不全 / ノックアウトマウス / megalin / 糸球体硬化症 / 腎間質線維化 |
研究概要 |
我々は、肝臓で合成されたangiotensinogenが、糸球体で濾過され、尿細管に再吸収され、それが腎臓内angiotensin IIの源泉になるという仮説を抱いている。前年度に、臓器特異的angiotensinogenノックアウトマウスを用いて、蛋白尿がない状態では、腎臓ではなく肝臓のangiotensinogenが腎臓内angiotensin IIに重要である事を証明した。今年度は、蛋白尿が存在する状態での腎臓内angiotensin IIの産生機序を解析した。この状態では、濾過される肝臓由来血漿angiotensinogenが著増するとともに、同時に腎臓内angiotensinogen mRNAの合成が増加するが、後者はまったく腎臓内angiotensin IIに影響を与えず、もっぱら前者によってのみ決定されている事がわかった。また、蛋白尿に加えて、高血圧状態の腎臓内angiotensin II産生の研究を行った。従来は、angiotensin IIにより腎臓内angiotensinogenの転写が亢進し、内因性の腎臓内angiotensin IIが増加すると報告されてきた。我々は、臓器特異的angiotensinogenノックアウトマウスを用いて検証したところ、従来の報告とは異なり、専ら肝臓由来のangiotensinogenが基質として使用されている事がわかった。 ポドサイト傷害後の糸球体内遺伝子発現の研究に関して、観察された変動がポドサイト内で起こっているかどうか見るには、新たな技術の導入が不可欠と考え、Ribotagマウスを導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腎臓および肝臓angiotensinogenの役割に関しては、順調に研究がすすんでいる。副産物として、脂肪細胞由来のangiotensinogenがほとんど血圧調節に寄与していない事を見いだした。腎臓内angiotensin IIの産生に、megalinが関与しているか否かの検証は、尿細管でmegalinを欠失するマウスの作成中であるが、完全に欠失させるには、予想以上の複雑なマウスの交配が必要で、現在ようやくマウスが得られつつあるところである。 ポドサイト傷害による糸球体内遺伝子変化を調べる研究として、後述のように方針の変換を決意し、Ribotagマウスを導入する事にし、現在マウスのコロニーに樹立を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
腎臓内angiotensin産生機序の研究に関しては、おおむね予定通り進めてゆく。Megalinノックアウトにより、腎臓内angiotensin IIが減少すれば、腎臓内angiotensin IIの機能的解析が可能となる。 ポドサイト傷害による糸球体内遺伝子変化の研究として、当初はいくつかの個別遺伝子の解析をする計画をたてていた。この計画の問題点としては、見いだされた糸球体遺伝子の変化が、ポドサイト、内皮細胞、メサンジウム細胞のどれで起こっているかが不明な点である。この問題を解決する方が、2, 3の個別遺伝子の解析より重要と考え、Ribotagマウスを導入する事にした。Ribotagマウスとは、Cre recombinase存在下で、リボゾーム構成蛋白質Rpl22にHA tagが挿入されるようにデザインされたマウスで、Cre発現マウスと交配する事により、組織ホモゲネートからCre発現細胞のみのリボゾーム結合mRNAを単離する事が可能である。我々の作成したNephrin-Creマウス、NEP25マウスと組み合わせる事により、ポドサイト特異的に翻訳される遺伝子、傷害ポドサイトに特異的に翻訳される遺伝子を網羅的にとらえる事が可能と期待される。
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