研究課題/領域番号 |
22249044
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
久保 亮治 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師 (70335256)
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研究分担者 |
永尾 圭介 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (40286521)
大山 学 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (10255424)
天谷 雅行 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (90212563)
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キーワード | タイトジャンクション / 皮膚バリア / ランゲルハンス細胞 / 抗原感作 / 経皮免疫 / アトピー性皮膚炎 |
研究概要 |
ランゲルハンス細胞(LC)の樹状突起と表皮ケラチノサイトとのタイトジャンクション(TJ)形成機構の解析のために、Claudin-1 conditionalノックアウトマウスを作成した。今後、本マウスとlangerin-creマウスを掛け合わせることにより、LC特異的にclaudin-1分子をノックアウトし、その表現形を解析する。これまでの研究から、活性化したLCはTJバリアの外側へと樹状突起を延長し、外来抗原を捕捉することが明らかとなっている。ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群を起こす黄色ブドウ球菌毒素(ETA)はデスモグレイン1を特異的に切断し、水疱を誘導する。ETAを皮膚表面に塗布した場合にTJを超えて生体内に入らない事を確認し、LC樹状突起先端部からのみ捕捉されたETAに対して中和抗体が産生されることを示した。LCはTJの外側に存在する皮膚表面の細菌由来抗原をサンプリングし、感染が生じる前に先制防御的な免疫反応を担っていることが示された(Ouchi et al,J Exp Med 2011)。本成果は、LCが樹状突起を表皮TJバリア外まで延長することの生物学的意義を初めて示した、意義深い結果である。一方、アトピー性皮膚炎病変部表皮では、LCに加えてIntra epidermal dendritic cell(IDEC)と呼ばれるlangerin陰性の樹状細胞が出現する。LCがTJバリアとドッキンスするのに対し、IDECはLCにくらべて表皮のより深いところに位置し、TJとのドッキング能を持たないことを明らかにした。また、アトピー性皮膚炎ではLCとIDECは高親和性IgEレセプターFcεRIを発現している。TJとドッキングしているLCにおいて、langerinが樹状突起先端に濃縮するのに対し、FcεRIは細胞表面全体に存在していた。すなわち、LCとIDECのいずれにおいても、IgEを介した抗原捕捉機序はTJバリアの内側で主に働いていた(論文準備中)。これらの発見は、アトピー性皮膚炎の病態解析、特に外来蛋白抗原に対するアレルギー感作機構を解析する上で重要な意義をもつ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ランゲルハンス細胞(LC)と表皮細胞とのタイトジャンクション(TJ)形成機構の解析のためのclaudin-1 conditional KOマウスの作成に成功している。また、LCの樹状突起を介したTJバリア外からの抗原取り込み機構により、皮膚表面の細菌由来抗原をサンプリングし、感染が生じる前に先制防御的な免疫反応を惹起するメカニズムが存在することを明らかとした他、ヒト皮膚におけるLCとTJの動態についても解析が進んできている。
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今後の研究の推進方策 |
Claudin-1 floxマウスをLangerin-creマウスと交配してLC特異的にclaudin-1を欠損させ、その表現形を解析する。また、KRT14promoter-ERcreマウスとも交配し、成体マウスにおいてタモキシフェン誘導性に表皮特異的にclaudin-1分子をノックアウトすること、さらにclaudin-4KOマウスと掛け合わせることにより、表皮TJが表皮の形態形成および皮膚バリア機能において担う役割を明らかとする。複数のclaudinファミリー分子が冗長性をもって発現している可能性があり、claudin-1分子のみの欠損では望んだ表現形が得られなかった場合は、さらにダブルKOを重ねて解析を進める。
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