研究課題/領域番号 |
22249044
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
久保 亮治 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70335256)
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研究分担者 |
大山 学 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (10255424)
永尾 圭介 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (40286521)
天谷 雅行 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (90212563)
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研究期間 (年度) |
2010-05-31 – 2014-03-31
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キーワード | 皮膚バリア解析 / アトピー性皮膚炎 / タイトジャンクション / 角質 |
研究概要 |
(1) ランゲルハンス細胞と表皮ケラチノサイトの相互作用とTJ形成機構の解析:Claudin-1 floxマウスをLangerin-creマウスと交配し、ランゲルハンス細胞で特異的にClaudin-1がノックアウトされることを確認した。本マウスにおけるランゲルハンス細胞と表皮TJバリアとの相互作用について解析中である。 (2) アトピー性皮膚炎患者皮膚において、TJバリアがどう変化しているか、表皮内樹状細胞はどう変化しているか について解析した。炎症部位においてもTJバリアは基本的には正常であった。ランゲルハンス細胞とTJとのドッキング数は増加していた。一方、炎症に伴って出現するIDECと呼ばれる表皮内樹状細胞はTJバリアとのドッキング能力を欠くことを明らかにした。ランゲルハンス細胞とIDECは、アトピー性皮膚炎においてはいずれもIgEのレセプターを発現しているが、その抗原取得メカニズムは異なっており、アトピーの病態において異なる役割を果たしていることが予想された。 (3) 毛嚢脂腺系のTJバリア機構の解明:毛嚢脂腺系のTJバリア構造を三次元可視化することに成功した。また、KRT14promoter-ERcre/Claudin-1 floxマウスを使用することにより、毛嚢脂腺系のTJバリアの機能解析を行うことが可能となった。現在解析を進めている。 (4) 表皮TJバリアと角質バリアの形成を調節する因子を探索するために、TJが存在する細胞層(重層上皮における表面から2層目の細胞層)およびTJと角質の間に存在する細胞層をそれぞれ単離し、遺伝子発現変化の解析を行った。本年度は、この解析結果から得られた候補分子について、表皮バリアの調節機能、表皮炎症コントロール機能を解析するためにノックアウトマウスの作成を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ランゲルハンス細胞と表皮細胞とのタイトジャンクション(TJ)形成機構の解析のためのclaudin-1 conditional KOマウスの作成に成功した。本マウスをLangerin-creマウスと掛け合わせることにより、ランゲルハンス細胞特異的にClaudin-1分子をノックアウトすることに成功し、現在解析中である。また、ランゲルハンス細胞の樹状突起を介したTJバリア外からの抗原取り込み機構により、皮膚表面の細菌由来抗原をサンプリングし、感染が生じる前に先制防御的な免疫反応を惹起するメカニズムが存在することを明らかとしており、本機能についてclaudin-1 KOが与える影響についても解析を行っている。 一方、ヒト皮膚におけるランゲルハンス細胞とTJの動態についても解析が進んできており、ヒトのTJバリアについての詳しい解析について、現在論文がrevision中である。また、アトピー性皮膚炎患者におけるTJバリアの変化とランゲルハンス細胞の動態の解析、皮膚炎症時に出現するIDECと呼ばれる表皮内樹状細胞とTJバリアとの相互作用についても解析が進み、現在論文投稿中である。 さらに、表皮顆粒層上層にて特異的に発現する分子を網羅的に同定するプロジェクトが進んでおり、機能未知の分子が複数同定されてきている。これらの分子が皮膚バリア形成に与える影響についての解析を開始しており、研究開始当初には思いもよらなかった分子の新しい機能を同定できることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
ランゲルハンス細胞と表皮細胞とのタイトジャンクション(TJ)形成機構の解析を引き続き進めるとともに、表皮顆粒層に特異的に発現する機能未知の分子についての解析を進める。さらに、原因未知の遺伝性皮膚疾患で、角化過程や皮膚バリア機能に異常を呈するものについて、同定した分子がその原因遺伝子である可能性を考慮し、随時遺伝子診断を行いながら研究を進める。遺伝性皮膚疾患の遺伝子診断については、すでに慶応義塾大学医学部の倫理委員会に倫理申請をおこない承認済みである(倫理申請番号;2012-0226)。また、表皮TJバリアの機能解析については、in vitroの再構成系では詳しい機能評価ができるものの、in vivoではこれまで、ランタンを用いた浸透試験(電子顕微鏡)と、蛋白ビオチン化試薬を用いた浸透試験(蛍光顕微鏡)が主な解析手段であり、より高分子に対するバリア機能を評価する手段がなかった。我々はブドウ球菌表皮はく脱毒素や、抗デスモグレイン抗体を用いた新しいTJバリア機能評価法を開発しており、本方法を応用して、毛嚢脂腺系のバリア構造についての解析を進めている。
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