研究概要 |
我々は難治性癌の中に、プロテアソーム活性が極めて低下した癌細胞集団が内在することを見出している。本研究では、この特性の可視化システムを構築し、難治性癌の基礎解析とその治療開発を目的としている。まず、ユビキチン非依存性プロテアソーム活性によって分解される代表的な蛋白ornithine decarboxylase(ODC)のプロテアソーム認識部位degron配列と蛍光蛋白ZsGreenの融合蛋白を発現するレトロウイルスベクターを構築し、ヒト肝癌細胞へ導入した。その結果、ほとんどの癌細胞は非蛍光のままであるが(G-)、数‰の細胞群(G+)に蛍光発現が認められた。G+細胞群とG-細胞群をFACS sortingにより単離してタイムラプス解析を行なった結果、G+細胞が非対称性分裂によりG-細胞を生じること、G-細胞は急速に対称性分裂して増殖すること、G-細胞からはG+細胞を生じないことを明らかにした。さらにG+細胞では通常酸素下でもhypoxia-inducible factor-1(HIF-1)が安定化すること、低酸素下では特異的にG+細胞が増殖すること、低酸素下で抗癌剤耐性を示すことを見出した。またG+細胞ではG-細胞に比べ活性酸素濃度が有意に低いことも確認した。これらの性質は休眠型幹細胞の特性と合致しているが、今までに報告されている癌幹細胞マーカーの発現(CD133,CD90,EpCAMなど)とは必ずしも一致しなかった。現在、G+細胞特異的分子の発現解析により新規癌幹細胞マーカーの同定を進めるとともに、マウス腫瘍モデルを用いて造腫瘍性や腫瘍内局在の解析を進めている。
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