研究課題/領域番号 |
22249058
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
不二門 尚 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50243233)
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研究分担者 |
瓶井 資弘 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (40281125)
三好 智満 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70314309)
辻川 元一 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70419472)
松下 賢治 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (40437405)
坂口 裕和 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (80379172)
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キーワード | 電気刺激 / 神経保護 / 人工視覚 / 網膜機能画像 / ラマン分光 |
研究概要 |
1.電気刺激による神経保護の分子機構:不死化した網膜色素上皮細胞(ARPE-19)および網膜神経節細胞(RGC-5)の培養系に対して二相性パルスで30分電気刺激を与え、3時間後にmRNAを抽出しReal Time PCRにて解析を行った。その結果、ARPE-19細胞ではGDNFの、RGC-5細胞ではIGF1のmRNAの増加が認められ、眼内での神経栄養因子のDrug Delivery Systemに寄与すると期待された。グルタミン酸(400mM)をRGC-5に投与し、ラマン顕微鏡で細胞内のcytochrome cの振動スペクトル(752cm^<-1>)を画像として経時的に観察し、Mitotrackerおよび抗cytochrome c抗体を用い免疫染色を行ったところ、ラマン像と同様、Mitotracker、cytochromecのシグナルは細胞質内に粒状に分布していたのが経過とともに拡散した。この変化はミトコンドリアの変化を捉えていると考えられ、神経細胞死を実時間で画像的に評価できることが示唆された。2.電気刺激による網膜刺激の、機能画像による評価法の確立:プラチナ電極による局所的網膜電気視的の網膜機能画像による評価法を確立した。本法は人工網膜による網膜刺激の有効性の評価法として有用であることが示唆された。3.視神経症の症例に対する経角膜電気刺激の臨床研究:外傷性視神経症48例48眼に対し、電気刺激治療し、治療開始3か月後の視力を比較検討した。治療前光覚なしの症例は全例光覚なしのままであったが、それ以上の視力の例では視力が改善した。この結果は、少しでも網膜の機能が残存している例であれば、電気刺激治療によって視機能が改善する可能性があることを示された。4.視神経刺激型人工視覚の開発:視神経乳頭電極を埋植した網膜色素変性患者に対し、長期の経過観察を行った結果、一部の症例で電気刺激閾値の上昇がみられた。原因についてはさらに検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経細胞死の新しい評価法としてラマン分光の有用性が示され、また培養網膜色素上皮細胞の電気刺激を、神経栄養因子の眼内deliverysy stemとして利用できる可能性が示されたことは、基礎研究として順調に成果が出ていることを表している。また、視神経症の症例に対する経角膜電気刺激法の適応基準が示され、視神経刺激型人工網膜の長期埋植の問題点を抽出できたことは、電気刺激による視覚回復の臨床的研究面でも成果が順調に出ていることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
基礎研究としては、ラマン分光を用いて、Pre-Apoptosisの状態の網膜神経節細胞の判定方法を確立し、電気刺激で細胞死に至る過程の神経細胞が生存できるか否かを画像的に検討する。また、網膜神経節細胞と、網膜グリア細胞の共培養系を用いて、より効果的に神経栄養因子が放出されるか否かを検討し、眼内delivery systemとして発展させる。臨床的には、経角膜電気刺激治療を多施設研究として発展させるための、プロトコール作り、視神経刺激型人工網膜の、次世代型の発展形を検討する。
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