研究概要 |
本研究は,感染症に起因する全身性炎症病態である敗血症において,蛋白異化亢進の機序としてオートファジーが亢進することを検証することを目的としている。本研究では,盲腸結紮穿孔による8-12週齢の雄性BALB-Cマウスを敗血症モデル動物とした。 敗血症病態の作成後,時系列で麻酔下に主要臓器を摘出し,オートファジー現象の程度を評価した。オートファジー現象は,light chain3 (LC3, ATG8)と融合したオートファゴソームが,最終的にリソソームと融合することにより誘導されるため,LC3蛋白の局在化とオートファゴソーム形成を免疫組織染色で評価した。肺,心房筋,腎臓,大動脈血管内皮細胞などにおいて,LC3のリソソームへの局在化やオートファゴソーム形成が時系列で高まることを確認した。 一方,敗血症の時系列のさまざまな臓器で,LC3 mRNAおよび蛋白量が増加し,さらに活性化されることを確認した。他のオートファジー関連蛋白に大きな量的変化を認めなかった。盲腸結紮穿孔術後3時間後にLC3 siRNAを投与したマウスの生存率を,siRNAを投与しない群,control scrambled siRNAを投与した群と比較した結果,LC3発現増加を抑制したsiRNAマウスの生存率は著明に改善した。さらに,このLC3レベルダウンにより,TUNEL染色陽性アポトーシス細胞が,肺,右心房,大動脈血管内皮細胞で減少した。 以上より,敗血症病態では,肺,心房筋,血管内皮細胞をはじめ,さまざまな臓器でLC3が活性化し,オートファジーが加速する可能性を検証した。敗血症病態では,オートファジーが加速するために,主要臓器の組織機能が障害される可能性がある.敗血症病態における肺などの主要臓器細胞で,オートファジーがアポトーシスに優先することも確認した。
|
今後の研究の推進方策 |
敗血症病態にアミノ酸負荷をした場合に,それらのアミノ酸投与がオートファジーを抑制できるかどうかを検証し,さらにアミノ酸トランスポータの発現解析を行う。あわせて,LC3発現増加に関与する転写メカニズム,活性化メカニズムを,転写因子とリン酸化蛋白の同定として評価する。
|