研究課題/領域番号 |
22249062
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
小守 壽文 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00252677)
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研究分担者 |
林 日出喜 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (10218589)
増山 律子 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (60297596)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | Runx2 / エンハンサー / 骨芽細胞 / トランスジェニックマウス / 転写制御 / 間葉系幹細胞 |
研究概要 |
Runx2は骨形成に必須の転写因子であり、骨芽細胞分化のマスター遺伝子として働いている。さらに、軟骨細胞の後期分化にも必須な役割を果たしている。したがって、Runx2の時間的、空間的制御機構を解明することは、間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化機構、さらに骨格形成・維持の機構を解明するために重要である。これまで、Runx2の転写開始点上流領域を用いたトランスジェニックマウスでは、Runx2の発現を再現することができなかった。これは、Runx2遺伝子の発現調節領域が、イントロンを含む広い範囲に存在していることを示唆している。我々は、Runx2のゲノム領域200 kbのDNA断片を用いて、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein, GFP)を発現させるマウスを作製した。このマウスでは、内在性のRunx2と全く同様にGFPを発現した。この200 kbを段階的に欠失させ、骨芽細胞の発現に必要な領域を突き止めた。最終的に340 bpの領域まで限定することが出来た。この340 bpに、Hsp 68(heat shock protein 68) minimal promoterとGFPを結合させたトランスジェニックマウスを作製し、GFPの発現パターンを解析すると、Runx2の骨芽細胞での発現を再現することが出来た。したがって、この領域が、Runx2を骨芽細胞特異的に発現させるエンハンサーであることが明らかになった。発現cDNAライブラリーを用いて、このエンハンサーを活性化させる転写因子、共役因子を同定した。さらに、それらのDNAへの結合、蛋白―蛋白相互作用を明らかにし、エンハンサーの活性化機構を明らかにした。このエンハンサーの活性化によりRunx2が発現、間葉系幹細胞を骨芽細胞系列へと分化させることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Runx2の時間的、空間的制御機構を解明することが本申請の目的である。骨芽細胞での発現制御機構は、エンハンサーの同定を行うとともにレポーターアッセイを用いたcDNAライブラリーのスクリーニングで、エンハンサーを活性化させる転写因子および共役因子を同定した。様々な長さのエンハンサー断片あるいは変異を入れたエンハンサー断片を用いたレポーターアッセイ、EMSA、ChIP 解析、蛋白―蛋白相互作用解析によりエンハンサーの制御機構を明らかにしていった。さらに、様々な長さのエンハンサー断片あるいは変異を入れたエンハンサー断片を用いたGFPトランスジェニックマウスを作製し、in vitroの結果を検証していった。これらの実験によりエンハンサーの活性化に重要な転写因子群、共役因子群とそれらの相互作用を明らかにした。さらにこれらの転写因子が誘導されるシグナル経路も明らかにした。これらの実験により間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化決定機構を明らかにすることが出来た。このエンハンサーを用いた、トランスジェニックマウスの作製も順調に進んでいる。一方、Runx2の軟骨細胞での発現を規定するエンハンサーの同定にも成功した。エンハンサーとHsp 68 minimal promoterを用いたGFPトランスジェニックマウスで、軟骨細胞特異的発現を見ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
更に領域を広げて、骨芽細胞特異的エンハンサーの同定と同様にBACクローンを用いて、GFPトランスジェニックマウスを作製した。順次DNAを欠失させ、軟骨細胞での発現パターンに異常をきたす領域を同定した。その領域とHsp 68 minimal promoterを用いたGFPトランスジェニックマウスで、軟骨細胞での発現を確認した。今後、軟骨細胞での発現に必要な最小領域を確定する。そして、この領域とminimal promoterを用いて、in vitroでのレポーターアッセイで、活性を調べる。発現cDNAライブラリーを用いて、このエンハンサーを活性化させる転写因子、共役因子を同定する。また、DNA配列より、結合しうる転写因子に関し、レポーター活性を調べる。同定した転写因子、共役因子は、レポーター活性における相乗効果、DNA結合、蛋白―蛋白結合を調べる。また、DNA結合配列の変異により、レポーター活性が低下するか検討する。同時にこの変異DNAを用いてGFPトランスジェニックマウスを作製し、軟骨細胞での発現パターンが消失するか検討する。これらの実験により、Runx2の軟骨細胞での発現を規定するエンハンサーの制御機構を明らかにする。
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