研究概要 |
Runx2は、骨芽細胞と軟骨細胞に特異的に発現している骨形成に必須の転写因子であり、骨芽細胞分化のマスター遺伝子として働くとともに、軟骨細胞の後期分化にも必須な役割を果たしている。また、Runx2は永久軟骨細胞の維持を阻害し、関節軟骨等の永久軟骨細胞を破壊する働きがあり、変形性関節症の原因遺伝子である。したがって、Runx2の骨芽細胞、軟骨細胞での発現制御機構を明らかにすることは、間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化機構、さらに関節軟骨等の永久軟骨の維持機構を解明するために重要である。 我々は、Runx2のゲノム領域を探索することにより、骨芽細胞特異的発現を誘導するエンハンサーを特定した。このエンハンサー343bpに、Hsp68(heat shock protein 68) minimal promoterと緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein, GFP)を結合させたトランスジェニックマウスでは骨芽細胞特異的にGFPが発現した。この343bp内の89bpに、Dlx5/Dlx6とMef2が直接DNA結合、さらに Tcf7, Ctnnb1, Sp7, Smad1, Sox5/Sox6が蛋白―蛋白相互作用により結合し、enhanceosomeを形成、エンハンサーを活性化していることを明らかにした。また、これらの因子はRunx2 mRNAも誘導した。一方、Msx2はエンハンサーを抑制していた。多能性間葉系細胞ではMsx2、骨芽細胞ではDlx5がエンハンサーのホメオボックスモティーフに結合しており、これらのホメオボックス遺伝子のどちらが結合するかが、エンハンサーの活性化に重要であった。このエンハンサー領域では、ヒストンバリアントH2A.Zが存在、ヒストンH3の4番目のリジンがモノ、ジメチル化され、トリメチル化されていなかった。また、18番目と27番目のリジンはアセチル化されていた。これらは、エンハンサーに特徴的なクロマチン修飾である。 上記因子によりエンハンサーは活性化され、Runx2発現が誘導され、間葉系幹細胞から骨芽細胞へと分化すると考えられる。
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