研究課題/領域番号 |
22249066
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鎌田 伸之 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (70242211)
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研究分担者 |
東川 晃一郎 広島大学, 病院, 講師 (80363084)
飛梅 圭 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (40350037)
太田 耕司 広島大学, 病院, 助教 (20335681)
小野 重弘 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (70379882)
重石 英生 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (90397943)
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キーワード | 上皮・間葉移行 / 浸潤・転移 / 転写因子 / 扁平上皮癌 |
研究概要 |
EMTは上皮細胞がその極性を失い、遊走能を持った間葉系細胞に変化する現象である。口腔扁平上皮癌におけるEMT誘導の機構を解明するとともに、EMTに伴って制御される遺伝子産物を検討し、口腔癌の高度悪性化の機構の解明と制御を明らかにすることを目的として以下の検討を行った。 1.EMTに伴って変化する遺伝子群に関する検討 1)EMT関連遺伝子として見出した分泌蛋白質Cyr61について検討し、安定発現扁平上皮癌細胞は浸潤能と運動能が亢進しパラクライン作用として浸潤能と運動能を促進させ,その際Rho蛋白質の活性が変化した。 2)同様にEMT関連遺信子として見出した分泌蛋白質Galectin 1について安定発現扁平上皮癌細胞を樹立し、その浸潤・運動能の亢進が明らかになった。 2.EMT誘導機構に関する検討 1)扁平上皮癌細胞に対して複数の液性因子添加と遊走スペースの付与により、EMTが誘導された。 2)CD44とESAによってソーティングされる細胞の中で、CD44(high)/ESA(low)がEHT型癌幹細胞の形質を持ち、sphere colony形成には、GSK3βが必要であることを見出した。 3.上皮細胞、間葉細胞における生理活性物質についての検討 1)上皮細胞と線維芽細胞における各種Toll-like Receptorの発現、誘導動態、および機能について検討を行い、また、IFN-γ、TNF-α、IL-4による各種ケモカイン発現の動態をPCRおよびELISAにより検討した結果、それぞれ上皮細胞と線維芽細胞で差が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.EMT型癌細胞が分泌する液性因子が、オートクライン作用のみならずパラクライン作用として、非EMT細胞に対しても、浸潤・遊走能を付与することが明らかになった。 2.複数の液性因子によって、扁平上皮癌細胞がEMTを獲得する機構が存在することが明らかになった。 3.マーカー蛋白質の発現により、EMT型の癌幹細胞の存在が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
EMTを獲得した癌細胞が分泌する液性因子によって非EMT細胞における浸潤・遊走能が誘導される機構が本研究で見出されたことにより、これまでに提唱されていた浸潤転移成立におけるEMT→MET機構は再考される可能性がある。この機構についてさらに検討を行う。また、遊走スペースの付与と複数の液性因子による扁平上皮癌細胞のEMT誘導についてそのシグナル伝達系、および癌幹細胞の形質を持つ細胞集団のEMTとの関連についてさらに詳細に明らかにしていく。
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