研究課題/領域番号 |
22251004
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
柳澤 雅之 京都大学, 地域研究統合情報センター, 准教授 (80314269)
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研究分担者 |
畑 俊充 京都大学, 生存圏研究所, 講師 (10243099)
水野 広祐 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (30283659)
神崎 護 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70183291)
竹田 晋也 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (90212026)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 森林 / 多面的機能 / 人為撹乱 / 持続性 / 東南アジア / 択伐林 / 包括的森林利用 |
研究概要 |
包括的森林利用を検討するために、インドネシア・中カリマンタンにて、伐採会社と地元住民が一体となり、森林の維持管理と住民による利用との両立を模索している事例を詳細に検討した。具体的には、神崎らによる森林の成長が林業の持続性におよぼす影響の評価と、柳澤らによる、地元住民による森林利用の変化と伐採会社による施業との関係に関する調査研究を行った。その結果、Shorea spp.の樹木の択伐と植林による森林の再生は良好で、現時点での成長曲線を維持する場合、25年サイクルの伐採施業は持続的であると考えられることがわかった。また、地元住民であるダヤックの人たちの森林利用の変化を検討した結果、特に2000年代になって急速な人口増加がおき、焼畑面積が拡大していること、また、商品経済が浸透し、ダヤックの人たちの森林利用が、自家消費用の産物利用から、換金作物の栽培にシフトしている村がでていることがわかった。本事例は、伐採企業がcommunity development programを実施し、地元住民のモニタリングと生活向上に多大なコストと労力を投入しており、そのことが、地元住民の生活の大きな変化にもかかわらず、現時点まで大きなコンフリクトが発生せず、森林が維持管理されていることが明らかになった。 また、東南アジアの他の地域における包括的森林利用の事例として、インドネシア・ジャワ(水野)、ミャンマー・バゴー山地(竹田)、和歌山県(畑)らが事例調査を行い、それぞれのメカニズムを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由) 研究計画は、おおむね順調に達成できている。特に、インドネシア・中カリマンタンにおける事例研究では、現地の伐採企業による全面的な協力が得られ、企業がこれまでに収集した森林の計測データや現地ダヤックの人びとの社会経済的なデータを多数、提供してもらうことができた。また、平成24年度中に、柳澤による大規模なインタビュー調査を実施することができ、十分な研究資料を入手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降は、インドネシア・中カリマンタンで行った大規模なインタビュー調査結果の分析を進めると同時に、他の調査結果とリンクさせながら、包括的な森林利用システムを明らかにする。また、平成25年度にインドネシア・ガジャマダ大学林学部および人家人類学部との協力体制を強化し、研究成果を相互に公開するためのワークショップを開催する。 また、他の地域における包括的森林利用の事例の検討では、インドネシア・ジャワの共有林、ミャンマー・バゴー山地の焼畑二次林における森林の維持管理、日本の和歌山県の備長炭生産地における技術の伝承と炭生産・森林維持の関係、ベトナム・中国国境地帯のモン族居住地における住民の森林の維持管理システム等、森林の維持管理と地元の人たちの生業体系との関係に特に焦点をあてて研究を継続する。 その他、事例の検討として、以下の事例を文献や短期フィールドワークによって検討する予定である。 熱帯アジアの大都市周辺に、植民地期に形成された薪炭供給のためのマングローブ林(シュンドルボン(バングラデシュ)、エーヤワディー・デルタ(ミャンマー)、マタン(マレーシア)、サムットソンクラムおよびチャンタブリ(タイ))。ミャンマーのラカインにあるマングローブ林。タイ北部山地のお茶と森林の結合したミアンの森林。シンガポール対岸のスマトラ沿岸部を中心にした木材の伐採・炭焼き・木材加工のシステムがあり、パンロン(panglong)と呼ばれる。ベトナム北部山地の森林利用。地元住民、地方政府、地方企業が一体となったPhu Tho省の森林利用システム。
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