研究課題/領域番号 |
22251009
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研究種目 |
基盤研究(A)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
常木 晃 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (70192648)
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研究分担者 |
久田 健一郎 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 准教授 (50156585)
谷口 陽子 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 助教 (40392550)
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キーワード | 西アジア / 新石器時代 / 社会の複雑化 / 都市化 / テル・エル・ケルク遺跡 / 封泥システム / ヘテラルキー / 共同体墓地 |
研究概要 |
本研究では、北西シリアのエル・ルージュ盆地に所在するメガサイトであるテル・エル・ケルク遺跡の発掘調査を継続実施し、農耕牧畜という生業成立とそれ以降の社会の複雑化を実証的に跡づけるとともに、のちの青銅器時代の都市遺跡にも匹敵する規模の社会がどのように運営されていたのか、それを支えていた権威や権力の在り方についての解明をめざしている。特に社会内部の集団関係や親族構造、物資管理法、多様な儀礼を時期ごとに詳細に復元していくことで、単に集落が拡大しただけではなく、その運営原理が階層的・管理的なもの(都市的なもの)に大きく変容していった様相を明示したいと考えている。本研究は、都市起源が紀元前4000年紀の南メソポタミアにあるとする従来の定説に対して、都市とは何か、その人類史的な意味を問い直す作業でもある。 平成22年度の現地調査は、ラマダン(断食月)期間中の1ヶ月間を挟んで7月~10月に実施した。実施項目は、テル・アイン・エル・ケルク中央区土器新石器時代第4~7層の集落および墓地の発掘、同北区先土器新石器時代B期の居住区の発掘、テル・エル・ケルク1号丘における2か所のトレンチ調査、出土人工遺物および自然遺物の整理研究、遺跡周辺の環境科学調査などである。屋外型の共同墓地である土器新石器時代中期の墓地から発見された埋葬人骨は240体を越え、副葬品類などの研究から、集団関係や物資管理、性による分業などを考察するための新資料が得られている。先土器新石器時代の集落はテルのもっとも北まで広がっていたことが判明し、その規模が16haを超えることが想定された。磁鉄鉱製の斧やカエル型ペンダントなどが出土し、高度な工芸技術の存在を証明する資料が追加された。エル・ルージュ盆地の地質構造など、遺跡立地を考察するための自然環境的調査も進行している。
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