研究課題/領域番号 |
22251010
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中村 慎一 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (80237403)
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研究分担者 |
鈴木 三男 東北大学, 学術資源研究公開センター, 教授 (80111483)
中村 俊夫 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 教授 (10135387)
金原 正明 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (10335466)
宇田津 徹朗 宮崎大学, 農学部, 准教授 (00253807)
渡部 展也 中部大学, 人文学部, 准教授 (10365497)
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キーワード | 考古学 / 先史学 / 学際研究 / 良渚文化 / 良渚遺跡群 / 国際研究者交流 / 中国 |
研究概要 |
海外調査としては、4度にわたり延べ15名が訪中し、計40目間を実地調査に費やした。調査の主な対象となったのは良渚遺跡群であるが、併せて関連遺跡の踏査等をも実施した。具体的には、各種出土遺物の観察・実測・写真撮影、土壌試料の花粉・珪藻・プラントオパール分析、土器付着炭化物等の放射性炭素年代測定、木器・木製品の樹種同定などからなる。また、日本国内においては衛星画像解析を行った。 これら一連の調査・分析から得られた主な成果は以下の通りである。 良渚囲壁集落は内外2重の環濠によって囲まれており、集落内へは水門を通じて交通が確保されていたことが判明していたが、その水門の位置と数について、現地形の測量と衛星写真の解析とを組み合わせることで、各面に2門ずつ、計8門が開いていたことがほぼ確実となった。 莫角山東麓遺跡の断ち割りトレンチ調査ならびに莫角山及びその周辺におけるボーリング調査を実施したことで、莫角山の築造過程について徐々に知見が集積されつつある。西半部では岩山の上に盛土を行っているのに対し、東半分は全てが人工的な盛土であり、厚いところでは15メートルに達することなどが明らかになってきている。今後、築造開始時期の地表面の特定とその年代測定へと進む予定である。 良渚遺跡群からは西に外れた余杭区崗公嶺で発見された「ダム」状遺構は植物で編んだ「モッコ」に土をつめ、それを積み上げて構築されている。その植物素材の年代測定を実施したところ、5000年前後の年代が得られている。これは良渚文化中期にほぼ相当する年代であり、現在想定されている良渚囲壁集落の建造年代(良渚文化後期)を300~400年遡るものである。良渚文化期における土木建築技術の発展が最終的に良渚囲壁の建造へと結実していく過程を解明する好個の資料が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の主要調査地であった美人地遺跡、莫角山東麓遺跡では人骨・動物骨の出土が僅少であったため、当初予定のそれらの形態学的観察やアイソトープ分析による食性解析を十分に進めることはできなかったが、莫角山東麓における大量の炭化稲籾の出土など予想外の成果があったほか、衛星写真解析においても大きな進展があり、全体としてはほぼ計画通りに進展したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で特に計画変更の必要性は感じていない。ただ、良渚遺跡群だけでも40平方キロメートルを超える面積を有している上、各遺跡地点の発掘調査では大量の遺物が出土するのが通例であるため、限られた海外調査日数の中で網羅的な調査研究を進めるのが難しい状況である。今後は、実施する研究のテーマと対象とする遺跡地点とを絞り込んで集中的な調査を実施していく必要がある。
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