研究課題/領域番号 |
22251010
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中村 慎一 金沢大学, その他部局等, 副学長 (80237403)
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研究分担者 |
宇田津 徹朗 宮崎大学, 農学部, 教授 (00253807)
中村 俊夫 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 教授 (10135387)
金原 正明 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (10335466)
渡部 展也 中部大学, 人文学部, 准教授 (10365497)
鈴木 三男 東北大学, 学術資源研究公開センター, 協力研究員 (80111483)
小柳 美樹 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 客員准教授 (40436671)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 考古学 / 先史学 / 中国 / 良渚文化 / 良渚遺跡群 / 学際研究 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
海外調査としては、4度にわたり延べ12名が訪中し、計4週間を実地調査に費やした。調査の主体を占めるのは良渚遺跡群であるが、併せて関連遺跡の踏査等をも実施した。具体的には、各種出土遺物の観察・実測・写真撮影、土壌試料の花粉・珪藻・プラントオパール分析、土器付着炭化物等の放射性炭素年代測定、木器・木製品の樹種同定などからなる。また、日本国内においては衛星画像解析を行った。これら一連の調査・分析から得られた主な成果は以下の通りである。 莫角山土台東麓断ち割りトレンチの発掘調査と並行して、莫角山土台のほぼ中央部においてもトレンチ調査を行い、土台の構築法や所属年代に関するデータを収集した。また、土台内外において約40か所のボーリング調査を行い、地下の堆積状況から原地形を復元する作業を開始した。また、昨年度に美人地地点より出土した木板等の木製部材について、樹種同定のためのサンプリングを行った。 囲壁集落環濠内出土品や莫角山土台東麓トレンチ出土品を試料(主に土器付着炭化物、短年生植物種子)とする放射性炭素年代測定を継続して実施したが、その結果は、囲壁集落ならびに莫角山土台の構築年代が良渚文化後期に下るものであるという従前の結果を補強するものとなっている。 塘山土塁とそれに接続する土塁・ダム群の存在が徐々に明らかになってきた。これは中国水利史上の画期的な発見であると言える。本年度については現地表面での踏査と衛星画像の解析を中心に行い、今後は精密な測量調査と部分的な試掘調査を実施する予定である。 12月には中国人研究協力者3名を日本へ招聘し、日本側メンバーとともに金沢市において研究成果報告会を開催するとともに、これまでの研究成果の確認と今後の研究計画の策定とを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、良渚遺跡群の中でも約3平方キロの範囲に広がる囲壁集落部分を中心に調査・研究を実施してきた。高精度の地形測量と衛星画像解析を併せ行うことで、古地形・古景観の復元は順調に進展している。 囲壁集落の中心に位置する莫角山遺跡については、全面的なボーリング調査や東麓地点でのトレンチ発掘調査の実施により、古環境復元や出土イネの形態学的研究を中心に研究は当初の予想を超えて急速に進展している。 出土人骨・動物骨の研究など、一部の分野においてはやや遅滞がみられるが、これも今後挽回が可能であることから、全体としてはおおむね順調に推移していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これからの残された2年間の研究期間については、研究の対象をある程度絞って集中的な調査を行うことが必要と考えている。やはり中心とすべきは莫角山土台であり、今後、トレンチ発掘の成果とボーリングコアの分析結果を突き合せつつ、その構築法や築造年代についてより精緻な復元を進めていく予定である。 塘山土塁を筆頭とするいわゆる水利関連遺構については、土木工学や水利史の専門家をも交えた研究が要請されている。ただ、その規模が広大であり、短期間での調査にはなじまないため、中国側が主に現地調査を担当し、日本側が衛星画像解析や理化学的年代測定等でそれを補う体制をとることとした。
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