研究課題/領域番号 |
22253001
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西村 浩一 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (10180639)
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研究分担者 |
高橋 修平 北見工業大学, 工学部, 教授 (50125390)
本山 秀明 国立極地研究所, 気水圏研究グループ, 教授 (20210099)
小杉 健二 独立行政法人防災科学技術研究所, 雪氷防災研究センター, 主任研究員 (40425509)
根本 征樹 独立行政法人防災科学技術研究所, 雪氷防災研究センター, 主任研究員 (30425516)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 吹雪 / 南極 / 積雪再配分 / 表面質量収支 / 極地 |
研究概要 |
本年度は、まず、昨年度冬季のフランスおよび北海道の石狩での観測結果から明らかとなった、以下の吹雪自動計測システムの不具合、 1.吹雪の有無を判定する閾値の設定が、観測期間中に不安定となる、 2. 風力発電機からの電力が効率的にシステムに供給されない、 について、一部電子部品の交換を行った上で再度調整を実施し、防災科学技術研究所雪氷防災センターの低温風洞を用いて、出力のキャリブレーションと低温下での性能試験を行った。 そして、前年度に名古屋大学で開催した「南極での吹雪研究に関わる国際ワークショップ」での議論の結果に基づき、国外では、フランスのIRSTEAに所属するNaaim博士の協力のもと、アルプスの吹雪観測施設に本機器を昨冬に引き続き2台設置し、既存のスノーパティクルカウンター(SPC)との比較観測を行った。また、オランダとベルギーの協力者の参加を得て、グリーンランド氷床全体からの昇華量を見積もる目的で、吹雪観測機器を2台設置した。さらに、日本の第54次南極地域観測隊に依頼して、吹雪観測システム1台を、昭和基地に近い南極大陸の沿岸部に設置し、冬期間の無人観測を開始した。このほか、前年度にイタリアのGrigioni博士の協力により、南極のTerra Nova基地近傍のLarsen氷河に観測システムを設置して行った吹雪の観測データの解析を進めた。 このほか、南極氷床全体の積雪再配分図を作成するための作業として、メソスケール気象モデルWRFを用いて大陸上の風向・風速分布を計算するアルゴリズムを確立したほか、これに独自の「吹雪モデル」を組み込んで計算を行い、2000年に研究代表者が行った、南極みずほ基地での吹雪の観測結果との比較検討を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き、①開発中の吹雪計のデータの出力が突然不安定になる、②風力発電機からの電力供給が効率的に行われないという不具合が、前年度冬期の観測データの解析から明らかになり、当初は、その対応に追われることとなった。その後、問題点はほぼ解消されたため、今後の観測は順調に進展すると期待される。ただし、昭和基地周辺の海氷状況が前年と同様に一向に好転しないため、今後数年間は内陸旅行を見合わせることとなり、当初予定していた昭和基地周辺の沿岸部から内陸のドームふじ基地に至る吹雪観測の実施は、昭和基地近傍を除いて、断念せざるをえない状況となった。そこで、昨年度10月に名古屋大学で開催された国際ワークショップにより確立された各国の協力態勢を新たに見直し、日本の昭和基地も含めた沿岸部に位置する英国、イタリア、フランス、ベルギーの基地において吹雪の広域分布の把握を目的とした観測を展開する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、まず昨冬に実施した吹雪観測システムにより得られたデータの解析を実施する。仮に何らかの問題点が見出された場合は、早急に対処策を講じ、厳しい条件下でも計測が可能なシステムとしての確立を目指す。 ここ数年、昭和基地周辺の海氷状況が厳しい状態が続き、砕氷船「しらせ」が接岸できない状態が続いている。このため燃料や機材の輸送に支障をきたし、当分の間は内陸調査を実施しない旨が決定された。当初の昭和基地からドームふじ基地に至るルート上での吹雪観測は断念せざるをえない状況となった。そこで、これに変わるものとして、研究協力態勢が築かれたイタリア、フランス、ベルギーの大陸沿岸部にある南極基地に機器を設置し、吹雪観測を行う。さらに英国南極局の主導のもと新たに開始される砕氷船で移動しながら海氷上で吹雪観測を行うプロジェクトでは、本吹雪計測システム2台が計測に用いられる運びとなった。 過去2年間にわたり継続中のフランスアルプスの吹雪観測施設でのスノーパティクルカウンター(SPC)との比較観測、また、グリーンランド氷床全体からの昇華量を見積りを目的とした吹雪観測機器も併せて実施する予定である。 本研究のもうひとつの柱である南極氷床全体の積雪再配分図の作成にあたっては、前年度に確立したメソスケール気象モデルWRFと「吹雪モデル」を結合して計算を実施する。
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