研究課題/領域番号 |
22254001
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
高田 秀重 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 教授 (70187970)
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研究分担者 |
多羅尾 光徳 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (60282802)
渡邊 泉 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (30302912)
ONWANA-AGYEMAN Siaw 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (10293549)
鈴木 聡 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (90196816)
熊田 英峰 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (60318194)
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キーワード | 屎尿汚染 / 重金属汚染 / 抗生物質 / 人為起源マーカー / 抗生物質耐性遺伝子 / 地下水 / 石油汚染 / e-waste |
研究概要 |
ガーナでの雨季および乾季の調査、ケニアでの調査、およびフィリピンでの調査を行った。ガーナ、ケニアの環境・人ふん便・家畜ふん便から大腸菌を約1000菌株分離し、全菌株の遺伝情報から菌株間の相同性を解析し、ガーナの都市河川においては人由来の尿尿汚染の寄与が大きいことが示唆された。これは、ガーナおよびケニアの河川から高濃度の抗生物質サルファメトキサゾールが検出されたことと一致する。一方、非都市域河川からは家畜に特有な抗生物質が低濃度ながら検出された。アフリカ・アジア地域で地下水の抗生物質汚染が観測された。ケニアでは深度100m以深の帯水層からもサルファメトキサゾールが検出された。降雨が少ないため下水は素掘りの排水溝の底から地下へ浸透している可能性が示唆された。ガーナでは石油汚染由来の多環芳香族炭化水素類汚染が観測された。汚染源の一つとして自動車修理場での車のオイルの周辺土壌への投棄が推察され、オイルと土壌の採取を行い、試料を日本に持ち帰った。ガーナのe-waste処分場近傍の河川堆積物から比較的高い濃度のPCBsが観測され、e-waste由来のPCBs汚染が懸念された。重金属汚染については、ガーナの露天の水銀鉱山周辺から極めて高濃度の水銀と銀を検出した。また、アブラナ科の数種の野菜からも比較的高濃度のカドミウムが検出された。薬物耐性遺伝子については、ガーナのアクラと周辺地域で採取した環境水から全DNAを精製し,定量PCRでテトラサイクリン耐性遺伝子および水銀耐性遺伝子の定量を行なった。その結果,アクラ市内のE-waste,郊外の淡水養殖場およびラグーンにおいて,両遺伝子共に約10E8のオーダー、濃度の高いところでは10E3程度検出された.水銀はほとんど検出されなかったことから,水銀耐性遺伝子は汚染の程度が低くても広くアクラ周辺の水圏に分布することが明らかになった。一旦流入または発生した耐性遺伝子が水平伝播によって拡散していることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アフリカの水環境汚染の実態を明らかにしつつある。特に、廃棄物管理が不十分なことなど熱帯アジアと共通する要因と、乾燥地であるため地下へと汚染が運ばれる等、熱帯アジアとは異なる汚染像を明らかにしつつある。成果も5報の投稿論文として着実に公表を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに調査を行ってきたガーナ、ケニアに加えて、今後は南アフリカ、モザンビークなど水環境汚染についての調査事例の少ない地域へ調査域を拡大する。さらに汚染の歴史的トレンドを調査するために、柱状堆積物試料の採取を行い、研究を時空的に進める。
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