研究課題/領域番号 |
22254001
|
応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
高田 秀重 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70187970)
|
研究分担者 |
O.A Siaw 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10293549)
渡邉 泉 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30302912)
多羅尾 光徳 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60282802)
鈴木 聡 愛媛大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90196816)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 屎尿汚染 / 抗生物質 / アフリカ / 水質汚染 / 地下水 / e-waste |
研究概要 |
複数の下水マーカーを使って経済的発展途上国の水質汚染源を評価する手法を開発した。その結果、調査したアフリカ3ヵ国については、水質汚染の主な起源は未処理の下水であることを明らかにした。南アフリカでは市内の高所得層が住む地域では下水道が普及して汚染レベルが低いのに対して、郊外の低所得層が住む地域では下水道が普及せず、未処理の下水により高レベルに汚染されていることを明らかにした。抗生物質については価格の低い抗生物質(サルファ剤)による汚染がアフリカでは熱帯アジアよりも顕著であり、一人当たりのGDPとサルファ剤の割合に関係が認められた。この傾向はガーナ、ケニアおよび南アフリカの低所得層居住地域で顕著であった。家畜排水の影響を複数のマーカーを使って検知する手法を開発し、アフリカ3ヵ国に適用した。その結果、都市から離れたリモートな地点においては、家畜排水の影響も検知されたが、その水質全般への影響は軽微であった。 アフリカでの汚染が顕著な抗生物質サルファメトキサゾール(SMX)の薬物耐性について、南アフリカで詳細な調査を行った。SMX耐性菌率は,郊外の排水影響の少ない地域より生活圏を流れる河川で高く,生活圏からの耐性菌または薬剤流入の影響がみられた。SMX耐性遺伝子の定量値ではsul1>sul2>sul3の順で多かった。注目すべきは,sul3は環境中での密度は低かったが、培養するとsul1, sul2と同程度に増殖した。 PCB汚染はペレットと堆積物を使って平面的に密な観測を行い、電子・電気廃棄物処分場が汚染源である可能性を示唆した。重金属については、ガーナの金鉱山付近の土壌、底質そしてほとんどの作物から明らかに高レベルの水銀やヒ素など強毒性金属が検出された。ヒ素は金採掘に付随して、水銀は小規模金抽出に使用され高濃度となったことが考えられ、PTWIの検討から住民の健康被害も懸念された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
途上国に共通し、はじめに問題となる屎尿汚染、石油汚染の実態と、それを検知・評価するための指標を確立した。アフリカ・アジア地域の水環境の汚染実態を把握し、汚染メカニズムを比較することから、これらの地域の水環境汚染に共通した原因と地域固有の問題を峻別し、アフリカ・アジア地域における水質汚濁メカニズムを明らかにしつつある。原初的な汚染である屎尿汚染から、環境ホルモン・医薬品・抗生物質汚染等の新興環境汚染までを対象とし、より普遍的な水質汚染メカニズムの解明という目的を達成しつつある。 上記の成果について、投稿論文としてすでに10報を国際誌に発表している。また、これから最終年度にも6報の発表を予定している。
|
今後の研究の推進方策 |
現地調査を進めると共に、結果の解析並びにそれらの国際学術誌へのさらなる投稿を行う。2013年度は最終年度にあたるが、6報を国際誌へ投稿・受理されることを目指す。
|